(03)

「お待たせー。大盛りにしといた…… え!?」




 客間で与晴は座って待っていなかった。


彼の背中には、二人の甥っ子たちが馬乗りになっていた。




「なんで起きてるの? 寝ないとオバケが出るよ」




 つばさは甥っ子たちをたしなめたが、彼らは言うことを聞かなかった。




「やだー! ともはるとあそぶの!」


「あそぶー!」




「与晴くんはこれからご飯を食べるの。降りなさい!」




 恭子が小さい子を引き剥がした。




「また今度にしようね!」




 つばさが大きい子を引き剥がした。




「やだー!」


「いやー!」




 しかし彼らは剥がしても磁石のようにすぐに与晴にくっついた。




「与、いいよ、遊ばなくて」




 実の伯母よりも、赤の他人の自分たちの父親よりも若い兄ちゃんに懐く甥っ子たち。


つばさは少し嫉妬した。




 そんなことに気づかない与晴は笑顔で子どもたちに伺いを立てている。




「ごはん食べてからでいい?」




 男の子二人は素直に頷いた。




「うん!」


「うん!」






 カレーを2回おかわりした後、与晴はちびっ子たちと遊びはじめた。




「よし! 遊ぼうか」




 つばさは母と二人でその様子を眺めていた。




「何で見た目の割に、子どもと動物にすっごく懐かれるんだろ……」




 ガタイがよく、眼光が鋭く顔が濃い。故にぱっと見が怖い。


 しかし、本当に刑事が出来てるのかと思うほど、普段乱暴な言葉遣いをしない。




「子どもと動物は本質を見抜くからじゃない?」




 その時、なぜだか分からないがつばさの脳裏に婚約者の顔が過ぎった。

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