(04)

 甥っ子たちが疲れて寝たのは、深夜一時だった。




「本当にごめんなさい。こんな遅くまで引き留めてしまって……」




 謝る恭子に、与晴は丁寧に挨拶をした。




「いえ。美味しいカレーごちそうさまでした。ワンちゃんにもちびっこたちにも会えて、大変楽しかったです。ありがとうございました」




 つばさも謝る。




「ごめんね。こんなつもりじゃなかった…… もういっそ、泊まってく?」




 最後の言葉に与晴は耳を疑った。


 とんでもない提案だ。母の恭子が止めるに違いない。


 しかし、その期待はすぐに打ち砕かれた。




「そうしてもらう? 明日も仕事一緒でしょ? 部屋はいくらでもあるし」




 与晴は丁重にお断りした。




「あの! いくらなんでも、岩井警視正がご不在の時に、男を泊めてはいけません!」




 すると母娘は不思議そうな表情を浮かべた。




「そう?」


「別に構わないけど?」




 娘も娘だが、母親も母親だった。


 触らぬ神に祟りなし、逃げるが勝ちだと、与晴はその場を後にした。




「これにて失礼いたします。おやすみなさい!」




「お疲れさま。また後でね」




「また来てね」




 どこまでも呑気な母娘だった。

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