(04)

「岩井! 真面目にやれ!」


 普段声を荒らげて怒ることは滅多にない三宅の怒鳴り声が、道場に響く。


「はい!」


 つばさは剣道が苦手だ。

 初段まではどうにか取ったが、それ以上の上達はどうにも望めなかった。

 今も、三宅に打ち込もうと必死にやっているが、面を取られ、胴を抜かれ……


「何やってる!」


 三宅に怒鳴られ続けているつばさを、ニヤリと何も言わずに眺める高階。

 つばさはそれに腹を立てたが、無理なものは無理。

 三宅に全く歯が立たずひたすら打たれつづけ、すごすごと退散した。


 不甲斐なさと苛立ちとで悶々としている彼女に、与晴は一言だけ声をかけた。


「……お疲れ様です」


「うん……」


 調子のいい茂山はつばさに軽口を叩く。


「姐御、仇を取りますぜ」


「……は?」


 つばさは彼を睨みつけた。


 茂山は剣道も柔道もいまいち。

ハイレベルの三宅相手にそんなことが出来るわけがない。

 つばさの怒りを気にも留めず、彼は与晴の肩を叩いた。


「与、姐御の仇を討ってこい!」


 与晴は何も言わずに三宅の前に進み出た。

 彼は五段の剣士。

 三宅を相手に互角の勝負を繰り広げた。

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