(03)

 沙代がつばさにワインを勧める。


「……それで、どうするの仕事。和義さんはなんて?」


 注いでもらったスパークリングワインで、つばさは喉を潤した。


「……どっちかっていうと、家にいてほしいって」


「つばさはいいの? それで」


 つばさは正直な気持ちを声に出した。


「刑事はできる限り続けたい。警察官もやめたくない」


「そりゃそうだわな……」


 沙代はつばさの子どもの時からの夢が刑事だと知っている。


「もっと真面目に考える」


「和義さんと話しあってみる」


「それが一番だよ。働き方、子どもはどうするのか、いろいろあるんだから」


 沙代は今度は赤ワインに手を出した。彼女は酒豪だ。

 つばさも強い方だが彼女には到底敵わない。その上、緊急呼び出しがあった時の為に飲み過ぎは禁物だ。オレンジジュースにした。


「沙代は最近どうなの? 例の彼氏さんとは?」


 沙代はグッと飲み干すと、自分でまたワインを注ぐ。


「ん? どの?」


「……え? もしかして、また変わったの?」


 彼女はいつからか相手が定まらない。長く続かない。

 つばさの記憶が確かなら、最後に一番長く続いていたのは…… 茂山だ。


「しょうがないでしょ。合わなかったんだから」


 赤ワインを一気に飲み干した。


「そっか……」


 恋愛の経験値がほぼゼロに近いつばさ、沙代に何も言えなかった。

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