(04)

 首にはネックレス、耳にイヤリング、指には婚約指輪。

ヒール、ワンピース。ネイルもしっかり。香水も少し付けた。

 普段仕事でしない分、精一杯のおしゃれをして、つばさは待ち合わせの場所にいた。

 今日は和義とデートの日。


「ごめん、待たせた?」


 待ち合わせの三分前に彼は現れた。シャツにジャケット姿。


「ううん。今来たところ」


「じゃ。行こうか」


「今日はドレスをゆっくり選ぼう。ランチは軽めで、夜はフレンチ」


 いつもきっちりスケジュールを決めてくれる和義につばさは全部お任せしていた。

 頼れる歳上の彼氏、将来の夫。


「ありがとう」




 まずはウエディングドレス選び。


「すごくいっぱいありますね……」


「ライン、ネックライン、スリーブ、いろいろありますが、まずはラインで選びましょうか」


  マーメイド、Aライン、エンパイア、ミニ、スレンダー、プリンセス……

と説明されたが、正直ちんぷんかんだった。


「では、逆にナシ!と思われるものは、ぱっと見でございますか?」


 そのアドバイスの方がつばさを助けた。


「ミニとエンパイヤ?はナシでお願いします」


 和義が笑う。


「つばさはいつもジャッジが早い」


「そう?」


「かっこいいよ」


 ドレスを眺めてつばさはふと気づいた。衣装を選ぶのは自分だけではない。


「和義さんはどうするの?」


「つばさのが決まったらそれに合わせる。男はそんなに種類ないしね」


「そう?」


 突然、バイブ音が響いた。


「……ごめん。ちょっと電話」


 和義の携帯だった。

 彼は電話に出るため、席を外した。すぐに戻っては来たが、慌てた様子だった。


「大丈夫? 呼び出し?」


「……うん。ほんとごめん。終わったらすぐ戻るから、ゆっくり悩んでて」


「わかった。気をつけて」


 和義は急いで出ていった。


 つばさもよく呼び出しがあるが、和義は桁違いに多い。

 デート中、必ずと言っていいほど電話が掛かってくる。

 プランナーの女性が、つばさに声をかけた。


「お忙しい方ですね、お相手の方」


「はい……」


 警察官である以上、当然だし仕方がないとつばさは腹を括っている。

 キャリアだった祖父も、ノンキャリアでのしあがった父もそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る