近郊の森10
フリッツ。
最初に視た時は当代の勇者様かと思っていた。
そう思ってしまうじゃない。
所作は洗練されている。
周囲をよく見ている。
何より人柄が良い。
そもそも普通にいい男だもの。
未だに誰も見せていないけど相応の実力はある。
あたりかまわず魅了を振りまいていたのは天然スキルだからだと思っていた。駄々洩れの魅力?みたいな。
でも違った。
と、いうか巧妙に隠している感じだったんだ。
スペックの隠蔽をここまで使いこなしているとは最初思っていなかったもの。騙されたよ。ほんと。
それに気づくきっかけは些細なモノだったけど。
警戒すべき相手だという事にそこで気づいたのだけど。
気づいた時には遅かったんだよ。
結構な数の街の人が魅了にやられていたんだもの。
無事なのはギルマスとか耐性がある人のみ。
とんでもないのはその威力だよ。
クレイグなんか完全に従者のようになっているし。かかりすぎでしょ?
今ここにいる私含めた三人はフリッツの影響を受けていない。
この三人でどう対処するかなんだけど。
私とエイミーに戦闘での貢献を期待されても困る。
ギルマスは強いようだけど。体力が無い。もう無理だろうな。うん、生き残れたら明日からはお酒を控えてもらおう。生きていたらだけど。
それほどフリッツは規格外だ。
とりあえず街に逃げ込みたいのだけど。魅了の事を考えると街も安全ではない気がする。
結局元に戻るのだけどフリッツは私に何の目的があるのだろうか?
クレイグを使って殺しに近い捕縛を指示してくるんだからなぁ。
もしかして私が一人で森に逃げ込んでフリッツから逃げればいいのかも。
であればエイミー達は無事に済むかもしれない。
今はそれしかないか。
問題は私にそれができるのかだ。
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