辺境の街5


 フリッツを視た。

 

 結果を確認する。

 

 げげっとなった。


 ・・・うん、黙っていよう。


 私に何かできるわけないもん。さすがに手に余る。


 できれば何も事を起こさないで別の街に旅立って欲しい。

 ストロングウィル達には余計な勧誘をしないよう、さりげなく釘をさしておこう。

 何事もなく済むのが希望です。ほんと。

 

 このまま様子見としたいのだけど・・・。

 

 やっぱりまずいかな?

 

 しゃーないか。

 食堂の副業が終わってから相談すっか。

 

 





「・・・・何言っているか?分かっている?僕は学者だよ。学者」

「うん、分かっているよ。先生ならいい知恵出してくれるかなと思ってね。へへへ」

「知恵も何も。何を言っているのやら分からないよ。僕は君に何も教えていないよね?だから先生は止めてよ」

「え~、いっつも色々教えてくれるじゃん。私にとっては先生だよ~」

「とにかく僕は学者なの。世間話ならいいけどギルドの仕事について良い知恵はないかと言われてもね」

「ギルドの特別顧問様じゃ~ん。ま、無償だけどさ。頼りにしてんだから~さ~」

「・・・それはアリが勝手に登録しているよね?相談にくるのが君だけだからいいけどさ」

「そう、そう。だから”特別”なんだってば」


 じっとりとした目で睨んでくるけど全く怖くない。もう見慣れたもの。

 鋭い緑色の目をしているけど、実は穏やかな顔している。それを知れば怖くもなんともない。むしろ愛嬌がある。この顔好きなんだよね。

 ・・・コホン。

 ま、文句はぐちゃぐちゃ言ってくるけど、さりげなく助けてくれる良い人だもの。頼りにしてますよセンセ。

 本に囲まれたかび臭い部屋から特別顧問という名目で外に出してあげてるのだ。感謝して欲しい。

 この人は口実を作って外に出さないといけない。放置すると一生部屋に籠城するに決まっている。

 たまに子供達に読み書きを教えていると本人は主張するのだけど。誰に教えているのか分からない。近所の人すら知らないんだよ。

 でもね・・・部屋に籠っている割には短めの黒髪はいつも整っている。

 髭が伸びている所は見た事がない。着ているものも濃紺のジャケットに同色のスラックス。細身の体によく似合っている。

 一見すると学者には見えない出で立ちだものね。

 


「・・・それで。何を気にしているんですか?」

「今日王都から来た冒険者が名簿に記録していったのよ。どうやら暫くここで活動するみたいなんだけど。本人は半分以上観光みたいな事を言っていたんだけどね~」

「また、何か気になったのですか?アリの勘は当たりますからね」

「えへへ。でしょ?ね、だからさ、相談に来たんよ」

「・・・・何を望んでいるんです?まさか、その人物に会えと?」

「そうね、会って欲しいとは思っているけど先生は嫌でしょ?」

「ああ、拒絶だね。そもそも僕は役に立たないような気がするのだけど」

「そうかな?えっとね。例えばなんだけどさ」


 ストレートに言うしかないのだけど多少変化をつけないとセンセは興味を失ってしまう。

 どう伝えたらいいのかな~。

 

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