近郊の森4


「ギルマス。剣とか持ってきてないの?」


 黙っていればよかったのだけど、どうしても気になってしまい。つい、口に出してしまった。

 だって自分の命がかかっているのだから。そもそも何で武器持ってないの?思いっきり手ぶらだし。

 おじいちゃん・・・散歩じゃないのよ。


「おおう。アリアーヌ。その調子なら大丈夫そうじゃな。いきなり呼ばれたからのう。街を歩くのに武装する者は冒険者だけじゃぞ。そもそも儂の得物を知っとるのか?」

「知らないよ。でも剣なんでしょ?」

「・・ふむ。そうか。ふむ」


 あ、ちょっとバレてしまったかも。ギルマスの視線が鋭くなったぞ。やっぱり敵だったかも。

 う~ん。でも今は現状から逃れるのが先だ。


「おいおい、何話をしているんだ。剣も無しに俺に勝てると思っているのか?」


 私達のやり取りを聞いて、いつもの調子を取り戻してきたようなクレイグ。

 やっぱり単純だ。武器が無いなら勝てると踏んだのだろう。パーティのランクはCとされているストロングウィルだけど。単純な剣技であればこの街ではトップクラスなクレイグだ。

 領都や王都でも上位に入る腕前だろうとギルマスはおだてていた。単純なクレイグは大層得意がっていたのを覚えている。

 本当の所は私には分からない。ギルマスが本当の事を言っているのかもわからない。

 でも無手でクレイグを制する事ができるのか?と聞かれると。

 

 無理じゃね?

 と、思う。

 

 だっておじいちゃんだし。今もふらついているみたいだし。お酒飲んでいたんだろうな。

 考えている時に背後から近づく気配を感じる。

 

「お待たせ」


 私を助けようと頑張ってくれた人だ。良き理解者でもある姉のような人だ。


「エイミーね。ギルマス呼んでくれてありがとう」

「あら。知っていたの?」

「ううん。さっきそうかなと思った。助けを探してくれていたんだね。ありがとう」


 あっというまにロープの拘束がなくなる。少しだけ緩くなったとはいえ簡単に解く事ができるとは。本当に手先が器用すぎる。

 

「今姿現して大丈夫なの?」

「え?ああ、クレイグの事?いいのよ。ストロングウィルは解散だから。少なくてもあんなリーダーの元で行動するつもりはあたしには無いし。多分ガイも同じだと思うわ」


 エイミーは大きなため息をつく。そこは大いに同意する。私もクレイグがこうなるとは予想外だったし。

 

「そっか。でもさ、ギルマスでクレイグは大丈夫なの?その・・・エイミーじゃクレイグ相手は無理なんでしょ?」

「その通り。無理よ。あたしが対人戦闘力を求めかっただけだからかね。人斬りなんて冗談じゃないわ。でも、ギルマスは任せとけと言っていたわよ。だから任せた」

「あ~、・・そうなのね」


 ソウデゴザイマスカ。

 ・・エイミーはどこまでギルマスの過去を知っているのだろ?

 そんな事、話をした事なかったな。私達はお互いの剣の技量を何故か知っている。

 クレイグの対人戦闘の強さを私は正確には知らない。エイミーは自分が三人いてもクレイグを倒せないと昔言っていたような気がする。

 

 でもほんとに任せていいの?

 ・・心配が増えてきてしまう。

 大丈夫。・・なんだよね?

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