勇者は隠者になりたい
ナギサ コウガ
辺境の街
太陽と月
光と影
ヒト族と魔族
そして、
勇者も魔王
いつでも、どこでも、表裏一体のものはある。
今もそうだ。
変わらない対立はある。
伝説の勇者様と魔王の戦いから何百年経ているのに。
なぜか魔王はいなくならない。
魔王も代替わりがあるのだろうか?
十年以上前にも、ここからはるか遠い国で勇者様と魔王の戦いがあったらしい。
私は小さかったから当時の詳しい様子は知らない。
魔王は倒されたというのが当時の大人達の認識だったのは覚えているけど。
倒されていなければ、今が平和な訳がないんだろうなとも思う。
そんな物思いにふけながらカウンターに頬杖ついている私。
・・・暇だね。
そりゃそうだ。今は昼下がり。この時間は冒険者ギルドに人は滅多に来ない。
いるのはのんびりお酒を飲んでいるおじいちゃん。おじいちゃんは言い過ぎか。一応建物を守る守衛さんも兼ねているんだからね。
でも、お酒飲んで守れる仕事なの?
確かにこの街のギルドを襲う不届き者はいないけど。
だからって昼間から飲酒は許されるのか?と、思うけど、あれでもこの冒険者ギルドのギルドマスターだからね。
そんなマスターだからではないと思うけど冒険者ギルドへの依頼ものんびりしたものが多いのよね。
農家のお手伝い、食材の調達、薬草の採集、街の人からのお使い、各種。これって冒険者がやる依頼なの?そんな依頼が殆ど。
危険な依頼というのか、生死を覚悟した依頼は少なくても私がこの街へ来てから無い。
だから高いランクの冒険者はこの街には留まらないんだよね。
Cランクのストロングウィルというパーティがこの街のギルドのナンバーワンパーティだ。
その彼らもこの街を離れたらどうなるんだろ?正直厳しいと思う。でも、彼らはこの街を気に入ってくれているようだ。私も良い関係が続いているから立場上楽だもの。
と、いっても実は私は冒険者が本業だ。受付嬢がお休みの時とか忙しい時に受付の副業をしているのだ。その他にも各種副業をしているから冒険者が本業かと誰かに揶揄われているけど。
本業は冒険者だ!
今日は朝から冒険者ギルドの受付と事務作業を夕方まで。夜からは食堂のフロアで給仕として深夜まで働く予定。
明日は朝から冒険者ギルドで受付。お昼には交代して、近所の赤ん坊のお守。
あれ?冒険者の仕事していないな。昨日だって、確か・・・。
うん、振り返るのはやめよう。
こんな事を考えてしまうのは暇だからいけないんだ。
何かないかな?
でも、何もないのが一番だ。
魔王の力が強ければこんなにのんびりとした時間は無いんだから。
でも、魔物は減っていない。
魔王が倒されれば魔物はいなくなるんじゃないの?
王国やギルドからの通達には魔王が倒れたら魔物がいなくなるとは無かったんだけど。
あれ?
なんで私そんな事思うんだろ?
誰に聞いたんだっけ?
魔物は減っていない。
魔王は倒れていない。
勇者様が魔王と倒したとしたら勇者様が残った魔物を倒してくれてもいいのに。もしくは国やギルドが動けばいいのに。
なんでそうしないんだろ?
なんで?
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