近郊の森


 フリッツは昨日はあれ以上接近してこなかった。

 なんたって街の女子連中に囲まれていたみたいだからね。

 願わくば毎日囲まれていて欲しい。それで私の日々の安全が保てる。

 私の何にフリッツの興味があったのかわからぬ。

 ホント困る。

 今日はフリッツ避け。お日様があるうちはずっと外に出る事にした。薬草採集とかの依頼も程よく溜まっていたから丁度よいのだ。

 街の周辺の森は奥に入らなければ私一人でも安全。ま、油断はしないけどね。でも、最近少し森の様子がおかしいから警戒は怠らない。安全第一だ。

 実はギルドの依頼でストロングウィルの数名が森の探索中だ。もし、今日会う事ができれば情報収集もしておこうという思いもある。情報は私の生命線。大事。

 念のためエイミーを誘ったのだけど珍しく用事があるからダメだと言われた。ストロングウィルのメンバーは結構独自に行動する事が多い。エイミーにもエイミーの目的がある。邪魔をするつもりはない。

 まずは依頼を消化だ。治療院や教会で精製する薬草を採取、採取・・っと。地味な作業は報酬が安いのもあって受ける人が少ない。

 

 

「・・・一応聞いておきます。こんな事をして覚悟はあるのです?どんな目的があるのです?」


 ・・・どうやら質問に答えるつもりはなさそう。

 

 最悪だ。

 

 まさか待ち伏せしているとは思わなかった。

 魔物の気配常時探っているから安全だと過信していたのか?

 人が近くにいるからストロングウィルのメンバーだと勝手に解釈した私に油断があったのか?

 

 過去の行動を後悔しても仕方ない。完全な危地だ。

 

 まさか待ち伏せしているとは想像もしなかった。

 待ち伏せできるスキルを持っているのは知っていた。もっと注意を払うべきだった。

 これは私の油断だ。

 まさかのまさかだ。もう少し考えればよかったのかも。


 ロープで拘束されて全く動きが取れない。・・・ここまで丁寧?に拘束されるとは。

 目の前の人はいつもの冷静な表情ではない。

 勝ち誇ったような・・・ああ、愉悦かも。多分こっちが素なんだろうな。

 そりゃそうだ。表向きの顔はいつでも取り繕える。

 そんな事を考えている私も大概か。


 拷問をされる。

 辱められる。

 洗脳される。

 

 悠長な事を考えている場合じゃない!

 だけど拘束しているロープは一向に緩まない。こいつ・・・縛り慣れているぞ。

 

 ここまでする?

 

 強引にエイミーに同行して貰えばよかった。

 早めにストロングウィルのメンバーと合流していればよかった。

 そもそも外出するべきじゃなかった。

 フリッツに付きまとわれるのくらい我慢すればよかった。

 

 後悔の気持ちが次々と湧いてくる。

 ちょっとだけ。

 ちょっとだけ反省する。

 それで終わり。

 

 今は目の前の危地をどうするか考えるだけだ。

 

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