辺境の街9

 

 理由は分からないけど私は注目されているのか?

 

 ・・・なんで?どして?

 

 結構注意していたはずなんだけどな。

 それにしても、どこに興味があったのか。

 

 私・・今日もフリッツに捕まりました。


 偶然を装っているけど、そうじゃないのは分かっている。もう何度もそうなっているからね。

 分かっているのだけど、私が睨んでもニッコリとした笑みで爽やかに躱してくる。ほんと何者?

 美しい見た目と違って、腹の中では何を・・・。ああ・・もういいや。


 あ~、なんか嫌な事思い出しそう。それが嫌だったから今ここにいるのに。

 それにさ、周囲の女性達の視線が痛いのよね。私はフリッツを何とも思っていない事を、どこかで強調しておかないといけないと再度心に刻む。

 

「道具を見に行くなら同行してもいいかな?君の意見が聞きたい」

「ご冗談を。私より高ランクのフリッツさんに意見など。分不相応です」

「そうかな?少なくても私はそう思っていないよ」

「どういう意味です?見た目通りの低ランク冒険者ですよ。だからギルドの事務作業や他の事もしているんですから」

「ふむ。それで良ければ私もそのように合わせよう」


 ぐっ・・・。

 この人どこまで。

 おちょくってんの?

 どこまで、何を、知っているの?

 少なくてもこの街では私は普通以下の冒険者だぞ。


 面倒な事になってきたぞ。

 まさかフリッツの注意が私に向くとは欠片も思って無かったよ。警戒が足りなかったの?

 ううん、そんな事は無い。

 簡単に辿りつけるはずがないんだ。

 

「道具を購入は何の目的なんだい?」

「・・・・・、野外に出るときに必要な備品を切らしているんです。補充目的ですよ」


 フリッツの雰囲気が少し変わる。この気配を私は過去に知っているヤツだ。

 ・・・どうする。

 頑張れ私。

 それに気づかないフリをして答える。できていると思うんだけど。どう?

 

「・・・ソロで街の外に出ているのかい?失礼だけど一人では安全で無いと思うのだけど。自分の安全については不安ではないのかな?であれば私が一緒に・」「結構です。もう何年もやってますから大丈夫ですよ」


 全部言わせるものか。向こうのペースにしちゃいけない。これ以上付きまとわれるのはゴメンこうむりたい。

 

「意外と強情なのだね。街の外に出る以上絶対に安全は無いのだよ。予期せぬ事はいつでも起こるものだ」

「知っています。それとも未来でも予測できるのですか?」

「それは無理だよ。それは誰でもできない事だよ。誰しもが欲しがるスキルではあるだろうけどね」

「王都にはそのような貴重な人と会った事はありますの?」

「居なかったと思う。敵意が向けられると敏感に察知できる人は結構いたかな。この街でもいるんじゃないかな?」

「・・どうでしょう?私は知らないですね。ギルマスは知っているかもしれませんよ。お酒飲んでいる時に聞かれないのです?」


 僅かに顔を歪めたけど一瞬だった。ふうん。

 

「聞いてないな。仮に知っていたとしても簡単には教えないだろうけどね。ギルドマスター自ら冒険者のパーソナル情報を他者には話さないと思うよ」

「では毎日何を話しているのです?毎日よく話が続くと感心しているのですけど」

「この街についての情報だよ。何しろ初めて来た街だからね。早く知るには一番知っている人に聞くのが早い」


 確かにね。だけど、ギルドマスターは偏った情報しか知らないと思うのだけど。


「成程。でしたら道具についてもギルマスから助言を頂いた方が宜しいですよ。それでは・・」「それは口実だよ」


 まだ何かあるの?

 どうも口で丸め込むのは諦めたのかな?

 だが私は断るのみ!

 もう付き合ってられない。どこかでボロは必ず出る。そこまで神経細かじゃないんだ!もー!


「正直言うと誤解を受けたくないのです。ですからフリッツさんと二人での行動はご遠慮します。私まだこの街で生活していたいので」

「私と一緒にいると不利益を受けると?」


 どれだけ痛い視線を浴びていると思っているのよ。この人が鈍感な筈が無い。分かって言っている。

 最悪だ。

 こんな態度で私の好感度が上がると考えているのか?ああ、そう所は鈍感なのか。

 どっちにしても迷惑だ。

 

「周りの人達を見てみてください。ギルドに忘れ物をしたので戻ります。これで失礼します。あ、同行は結構ですので」


 まっしぐらにギルドに向かってダッシュ!

 ついてくるかもしれないけど、来たら来たでギルマス達に助けて貰おう。

 

 ほんと邪魔にしかならない!


 なんて人に目をつけられたんだ!


 

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