辺境の街3
「いや~、思ったより簡単に片付いてしまった!助っ人が入ってしまったけど報酬に変更はないかな?アリアーヌ大丈夫か?」
入って来る早々の大声だ。
この人耳がおかしいのか常に声量が大きい。
探索している時もこんな大声なんだろうか?一緒に行動しているパーティの面々の耳は無事なんだろうか?依頼の結果と違う事を考えてしまう。
そんだけ声が大きい。この・・ストロングウィルのリーダーだ。あんだけ筋肉装備しているからなんだろうか?いつか聞いてみたいもんだ。
これ以上は脱線してしまう。それにしても助っ人か。一緒にいる男性だな。あの男性はパーティメンバーではない。
それにしても長身だ。
「なんじゃ?助っ人なんぞ、どこから連れて来たんじゃ?お前らしくもないな、クレイグ」
「お~!ギルマス!いや~、たまたまこの御仁が居たんだよ。意味も無く森で迷ったらしいぞ!なあ!」
クレイグは男性の肩をバンバンと叩く。随分と気安いな。初対面じゃないのかしら?結構な力なはずなんだけど男性はピクリともしない。は~ん、そういう事か。
でも、森に迷ったって。
どういう事?
「この地域には初めて来たので。迷ってしまいました。困っていたらゴブリンが近くにいて、そこに彼らもいて。迷惑だったかもしれませんが助けになればと参戦した次第」
「おう!本当に助かったぜ!結構知恵が回るゴブリン達だったんだよ!背後から来てくれたんで上手い事いったんだよ!」
いい加減肩バンバン止めなさいよ。クレイグはギルマスと話をしているから割り込めない。と、いうかそれで済むならそうして欲しい。受付泣かせのクレイグなのだ。・・・本当に耳がダメになる。
「ふむ、そうじゃったか。ま、報酬はお前たちに支払うから、後は助っ人殿と話し合って決めるがよかろう」
「おう!それじゃ報酬はひとまずもらっておくか!頼むぞ!」
クレイグの声が響く前にパーティメンバーのガイがカウンターにやってくる。
・・・うん。いつも通りの苦笑顔だ。今回もゴクロウサマです。このパーティの苦労人で実質のリーダーだ。多分現場でも仕切っているのはガイだと思う。
そんな事も気にしないでクレイグの喋りは止まらない。ああ、耳が・・。
「今回も無事に依頼を済ませられた!良かった!良かった!」
「くれぐれも無理はするんじゃないぞ。ゴブリン討伐はお前さん達しかできないんじゃからな。何度も繰り返すが依頼内容より数が多ければ無理せず引き返すんじゃぞ」
「勿論だ!アリアーヌの見積もりはいつも間違いがないからバッチリだ!」
「ホッツホッツホ。調査確認はこのギルドで一番じゃからのう。アリアーヌがおれば滅多な事はないと思うのじゃが無理は禁物じゃぞ」
「おう!分かっているぞ!」
あ~耳せんがほしい。耳せんしても無駄なのは分かっているけど、ちょっとだけ軽減するから。パーティメンバーはなんでダメージないんだろといつも思う。
見ていても全員平気な感じだ。おかしい。
なんか悔しい感じをしながら依頼プレートの内容を確認する。うん、ばっちりクリアできている。準備してた報酬をガイに渡す。
この間にもガイとは会話をしているのだけどクレイグの声でかき消され、何度も繰り返してしまう。いつもの事だけど、誰か黙らせて。
「失礼だが、あのリーダーは常にあの音量なのかな?俺は慣れていないからか二人のやり取りが聞こえないんだが」
「え?はい、クレイグはいつもあんな感じです。依頼に出ている時は私は知りませんがガイの表情で察してください」
「ふむ。成程。理解した。それにしても賑やかなメンバーだな」
「あれ一人だけがうるさいんです。静かなのは食べている時だけじゃないですかね」
男性の顔が困った顔になってしまった。
そこでようやく男性に目を向ける。
黒髪に黒い目。身長はストロングウィルのメンバーより高いから180センチの後半だろうか?この身長で細くなく、太くない。随分と鍛えられた体だと思う。顔もいい。悪くない物件だ。
この身長で顔は小さい。反対に手が大きい。
なんとなく只者じゃない気配がする。
私は内緒にしているスキルをこっそり使う。初対面の人に使う事は滅多にないんだけどね。
なんとなくだけど私の勘が告げている。
使うべきだと。
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