辺境の街7

 

 フリッツが来てから十日程経過した。

 今の所何も問題は起こっていない。

 ・・・今の所は・・ね。

 

 意外な事にストロングウィルはフリッツと組んで依頼に出る事は無かった。これはほんと意外だ。ウマが合っていたと思ったんだけどね。

 聞くところによるとフリッツは彼らと違う宿に宿泊しているらしい。だからなのか一緒になるタイミングがないようだ。

 もっともクレイグ達もそれ程フリッツにこだわりがない感じだ。これはある意味想定内だ。

 

 そもそもフリッツ自身が一緒に行動する気が無い。

 フリッツは昼頃ギルドに来る。依頼を受ける気は今の所無いな。ま、そうだろうけど。

 今日もお昼前に来ている。そんでギルマスとお酒を飲んでいる。ほんと何しに来ているんだろ。一緒に飲んでいるギルマスもギルマスだけどね。飲み仲間が増えて嬉しいんだろうけどさ。

 何が気に入ったのか分からないけど話が合うみたいなんだよね。今も熱心に話し込んでいる。何を話し込んでいるのやら。ギルマスに聞いてもなぜかはぐらかすばかり。

 今日もおんなじ感じだろう。お酒飲んで、夕ご飯前にはフリッツはいなくなる。

 私はどうでもいい。

 今は・・・ね。


 騒がしいのは街の女子達だ。やっぱりというかフリッツが気になるらしく、あちこちつきまとっているようだ。これも聞くところによるとだけどね。私はつきまとったりはしない。

 確かにこの街にいないイケメンだ。背が高く、顔はちっさい。色気が漂う目元。外面の性格も良いみたいだ。そりゃしかたないよね。


 昼酒で盛り上がっている二人を眺めながら王都のギルドから送られてきた報告書を私はめくる。


 ふうん。


 予想通りというか・・・。

 いい感じで手を抜いているような気がするわね。

 あんな能力持っていれば王都では高レベルの依頼も受けられるし、間違いなく達成できるだろう。

 本人に積極的にのし上がる気持ちはないようだ。

 だからなのか王都のギルドの評価はそれ程高くない。

 Cランク評価なのだ。王都のギルドはどこ見ているのか。それとも実力を隠しているのか。一応、私は分かるんだけどな。

 ま、王都には一年もいなかったようだし。

 その前は北の隣国から来たらしいと報告書には記されている。推測かぁ。

 ここから前歴を辿るのは結構手間だ。

 ギルドタグも今はこの街のタグしかつけていない。来た時は王都のタグをつけていたのに。普通は自身の経歴を示すためジャラジャラとぶら下げているんだけどね。

 ・・意図的だろうな。

 そっちの方向では目立つ事を避けている。

 入念というかある程度注意しているのは間違いない。

 何か目的があるのだけど、その目的にランクは必要ないからだろうな。

 その反面、情報収集には熱心だ。今はギルマスだけどあちこちでフリッツに何かを聞かれたという人は多い。

 

 その目的はなんだろ?

 

 気にならない訳がない。

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