undercover


 あたしではあの男からエレオノール様を護れない。

 そのような技能が無いからだ。ホビットの小さい体躯ではどう頑張っても戦いには向かない。身を挺して守る事はもっと無理だ。

 できる事はなるべく一緒にいる事。それだけでも少しは役に立っていると思っている。

 幸いにもストロングウィルのメンバーは話が分かる連中がいたから比較的安全は確保できていた。

 この街にいるだけなら大丈夫だと思っていた。

 

 あの男が来るまでは。

 

 あれは人では無い。

 あたしの本能が告げる。

 

 何者か見極められない程の実力者である事は確実だ。

 魅了のスキルが強力でストロングウィルのメンバーもやられてしまった。あれでは解除もできないかもしれない。

 油断はしていなかったと思う。あれほどの術者だとは予測つかなかったのだから無理はない。そもそもレジストできるレベルではないのだ。


 あたしが実力を見誤るのはこれで二人目。

 

 二人とも相当な化け物だ。

 

 あたしではあの者には対処できない。

 このままではエレオノール様を別の街にお連れするしか方法が無い。

 

 無いのだけど・・・。

 肝心のエレオノール様が離れたがらないだろう。

 しかも何故かあの男に目をつけられたようだ。


 エレオノール様の素性は誰も知らない。

 否、知る方法がないのだから。

 あれほどの執着を見せるという事は知っているのだろうか?

 

 だから、この街からは退場してもらうしかない。

 その方法はひとつだけだ。

 

 化け物には化け物で対処するしかない。

 だが、あの者が動いてくれるだろうか。

 アレ自身の目的すら現時点でも分からない。調べたけども全く無駄だった。

 何の目的も無いようなのだ。

 隠居か隠者のように人前に出てこない。何をしたいのか目的が一切測れない。

 

 この地には何か魔術的なモノがあるのだろうか?

 あたしの魔術の知識では理解できない。

 

 交渉はできるだろうか。

 あの者に会うのも半年ぶりだ。あの時以上に偏屈になっていなければいいのだけど。

 

 交渉が失敗したらあとは一人か。

 だが、あれでは敵うまい。剣聖の弟子とはいえ、あの化け物より実力は測れている。

 

 いいや、まずはこちらの交渉だ。

 なんとしても説き伏せないと。

 

 エレオノール様の安全がかかっているのだから。

 

 

 

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