学園一の美少女が許嫁になった翌日に、疎遠になっていた幼馴染が実は女の子でしかも結婚の約束を幼い頃にしていたことが発覚して修羅場過ぎるんだが
本町かまくら
プロローグ 修羅場の幕開け
「――起きて、松下くん」
「…………んあ」
目が覚めると、真っ先に飛び込んできたのは、学園一の美少女の顔だった。
銀色の髪が俺の顔に少しかかっていて、おまけに男子がくぎ付けになっている豊満な胸がすぐ近くにある。
それに魅惑的な甘い匂いもしてきた。
「…………夢?」
「夢じゃないよ。佐原先生が職員室に来いって」
「……あぁ、なるほど」
意識が鮮明になる。
そういえば、数学の授業が退屈で寝てしまったんだった。
「授業は?」
「終わったよ。それにしても、すごい寝てたね」
クスクス、と笑う。
大人びた印象の彼女が少し子供っぽく、頬を緩ませる。
すると教室の至る所から、
「か、可愛い……」
「天使だ……! あれはきっと天使の生まれ変わりに違いない……ッ!」
「結婚したいッ! クソッ‼ ずっと隣にいたい‼」
「あぁ神様、早坂さんと付き合える世界線に、どうか俺を……!」
……確かに、絶大な人気を誇っているようだ。
「早く行きなよ?」
「……あぁ。ありがとう」
「どういたしまして~」
何でもないような笑みを浮かべて、友達のところに向かっていく彼女。
しばらくそんな彼女の姿を見ていると、彼女とよく一緒にいる小動物みたいな女子から睨まれた。
視線をそらして、体を起こす。
「おはよ、透。いい目覚めだったんじゃない?」
「……そんなんじゃねぇよ、伊織」
からかいの笑みを浮かべているのは、悪友の青山伊織(あおやまいおり)。
またの名を、女好きクソ野郎という。
「さすがの早坂さんでも、女子に興味のない透は落とせないかぁ」
「何言ってんだよ。そもそも俺にとっては高嶺の花すぎるだろうが」
「はははっ。別に農民が王女様に恋したっていいと思うんだけどねぇ?」
「誰が農民だ」
早坂が王女様ってのは、反論しないけど。
「早坂さん、可愛いと思うけどねぇ?」
「……そうだな。でも、俺なんて業務連絡くらいしか話すことねーよ」
そう投げやりに言って、席を立った。
そしてもう一度、クラス中の視線を集める彼女のことを見た。
学園一の美少女、早坂友梨(はやさかゆり)。
誰もが認める圧倒的美少女で、影響力は高校外にも及ぶらしく、告白する奴が後を絶たない正真正銘の人気者。
街を歩けば誰もが振り返り、芸能事務所に何度もスカウトされているだとか。
おまけに非公認のファンクラブがあるらしく、学園内にのみならず、地元ナンバーワンの称号を得ているらしい。
そんな彼女が俺と関わり、なんてものはあるわけもなく。
ましてや『恋をする』なんて身の程をわきまえてなさすぎる。
――だから。
きっとこの先も、ただのクラスメイトってだけの関係が続くんだろうなと、漠然と思っていた……
「――で、お前この子と将来、結婚してもらうから」
「…………は?」
目を何度も瞬きさせる。
加えて頬を抓ってみるが、痛みを感じ、これが現実なんだと思い知らされた。
目の前にちょこんと座る、『この子』。
名前は――早坂友梨。
何故か学園一の美少女が、俺の許嫁になっていた――
***
――その頃、イギリスでは。
「早く会いたいわ、透」
幼い頃の色あせた写真を見つめ、恍惚とした表情を浮かべる少女が、思いを馳せていた。
――修羅場に向けて、物語が動き出す。
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