第一話 これ決定事項らしい
風情のある和室にて。
とんでもない衝撃事実が暴露された。
「お前この子と将来、結婚してもらうから」
これほんとに日本語か? と疑うほど話が入ってこない。
「ちょっと待て。……なんでこうなった?」
「これには実に深い理由があってだな……」
父さんがしみじみと天を仰ぐ。
「父さんと友梨ちゃんのお父さんは、実は高校の頃に仲が良くってな。つい最近居酒屋で偶然再会したんだよ」
すると早坂の父親が、腕を組んで、
「そのとき、お互いの子供の話になってね。どうやら同い年で、おまけに同じ高校ってことが発覚したんだ。あのときは、嬉しかったなぁ」
「それでお互いに相談しあって、なんという偶然か、両方高校生にもなって恋の一つすらもしてなかったわけだよ。加えて、異性に興味がないと言ってる始末だ」
「お互いにため息をついたその時、ビールジョッキ片手にぴーん‼ と来ちゃったのさ」
「あぁ、そうだったな!」
悪ガキのように、ニヒヒと笑い合うチームファザー。
俺と早坂は嫌な予感がして、顔をしかめた。
「「そうだ、子供同士、結婚させちゃえばいいんだ! って」」
「「アホか‼」」
話が飛躍しすぎにもほどがある。
「なんでそうなるのお父さん……」
「なんで逆にこうならないんだ?」
「その通りだ!」
「その通りじゃねぇよ!」
息が上がる。
「どうしてそんなに結婚させたがるんだよ」
そう問うと、何を今更、と言った顔で、
「「孫の顔が、早く見たいからだ‼」」
「「気が早いわ‼」」
ぶっ飛びファザーに、俺と早坂の声が揃ってしまう始末。
だが、俺たちの反応なんて気にも留めずに、話が進んでいく。
「とにかく、これからお前らには、許嫁として、一緒に暮らしてもらうから」
「「…………は?」」
俺たちに突っ込ませる余裕すら与えず、
「もう荷物は新居の方に移したから、この後行ってくれ」
「初めての同棲にはもったいないくらいにいい部屋を用意したからね」
「…………」
「…………」
F1レーサーもびっくりのスピードに置いていかれる俺たち。
相変わらず父さんたちは、曇りのない笑みを浮かべている。
「透くん。友梨は照れ屋なところがあるが、見ての通り可愛いから」
「お、お父さん⁈」
耳まで真っ赤にする早坂。
……確かに可愛い。
「だから、うちの娘を、よろしく頼むよ」
「……は、はぁ」
もうこうとしか反応できない。
あわあわとしている早坂の方を向く父さん。
「友梨ちゃん。透はいつも仏頂面だが、こう見えてもやればできる男だ」
「……何言ってんだ父さん」
「だから、よろしく頼む」
「……は、はい」
困惑した様子で頷く。
え、いいの?
「じゃあ二人とも、これから仲良くな!」
父さんはガハハ! と笑った。
あはは……。
一体どうなってんだこれ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます