第十四話 まともな同棲生活?


 家に帰ってくると、広瀬が「よしっ!」と気合を入れて、フリフリのエプロンを制服の上から身に着けた。


 夜ご飯を作るのは当番制になっていて、今日は広瀬の当番なのだ。


「広瀬って料理できるのか?」


「できるわよ」


「へぇー」


 まぁ広瀬のことだから、なんでもできそうな気がする。


「と、透くんっ。私もお料理できるよ?」


「そ、そうか……すごいな」


「ふへへへ~……」


 嬉しそうににへら、と頬を緩ませる早坂。


 ソファーにもたれかかって、上機嫌に鼻歌を歌っている。


 俺はそんな二人の様子を見ながら、ぼんやりとテレビを見る。


 ……なんだか今日は、一段と疲れた気がするな。





「「「ごちそうさまでした!」」」


 声が揃う。


 夜ご飯を満足のいくまで平らげた俺たちは、満腹感と幸福感に満たされて天を仰いでいた。


 つまり、それほどに――


「マジ美味かった」


「悔しいけど、すっごく美味しかった……」


「ふふん! まぁね!」


 嬉しそうに胸を張る広瀬。


 ただ、そんな得意げな広瀬をただただすごいと思うほどに、本当に美味しかったのだ。


「どう? 私をお嫁さんにしてくれたら、毎日食べさせてあげるわよ?」


 頬杖をしながら、誘うように言ってくる。


「ま、マジか……」


「透くん⁈」


 俺は食をかなり重視するタイプだ。


 なので、この飯が毎日食べられると思うと……かなりなびいてしまう。


 が~ん! という効果音がぴったりな落ち込みっぷりの早坂、とそれを見てまた得意げになる広瀬。


「わ、私だって負けないから……」


 目にわずかな涙を浮かべて、頬を膨らませてそう言う。


 この調子だと、どんどん出される料理のレベルが上がっていきそうだ。


 ……でもどうしよう。俺、卵焼きくらいしか作れないんだけど。


 結局、料理は二人に任せることにした。適材適所である。





 ご飯を食べ終わると、早坂の心遣いかベストなタイミングでお風呂が沸いた。


 なんだか色々と俺に都合のいい展開過ぎるような気がするが……まぁ気にせずにありがたく一番風呂を頂くことにする。


「じゃあ、お先に」


「うん! ゆ~っくり、入っててね~」


「うん」


 格別な夜ご飯を食べれたからか、気分がやけにいい俺はルンルンで体を洗い、浴槽に浸かる。


「ふへぇ~」


 全身から疲れが逃げていく感じがする。


 それもそのはず。今日は学校で色々あったから。


「ほんと、色々ありすぎだろ……」


 もはや以前とは比べ物にならないほどに変わってしまっている。


 毎日がお祭りになったというか、なんというか。


「よくわかんね」


 とりあえず今は面倒なことは考えないでおいて、体を休めることにした。


 それに、唯一と言っていいほどにちゃんと安らげる時間は、この風呂の時間なのだ。


 常にまだ慣れないあの二人と一緒にいるわけだし、この時間は貴重だ。


「(まぁ、さすがにあの二人と言えど、風呂場に突撃してくることはないよなぁ……)」


 なんて呑気なことを考えていたが、それが見事にフラグになったようで。



「お、お邪魔します……」「お邪魔するわ!」



 バスタオルを巻いた、美少女二人がおずおずと入ってきた。


「…………へ?」


 何してんのこの二人⁈

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