第二十二話 JKの生足
――キーンコーンカーンコーン。
学園もののくせに妙に放課後の描写が多いことはさておき。
学生待望の放課後を知らせるチャイムが鳴り響いた。
いつもなら直帰するところ、今日はとある大切な予定があったので、すでに準備の完了したバッグを肩にかけ席を立つ。
そしてスマホを開き、グループにメッセージを投下した。
『透:先行くぞ』
『広瀬:了解ッ』
『早坂:わかったー』
ちらりと二人に視線をやると、やる気満々と言った表情の広瀬が俺に向かってサムズアップしてきた。
同じように親指を立てて返す。
「透、何してるんだ?」
「……何だ伊織か」
「なんだとはなんだ」
不満げに顔を歪めるが、すぐに爽やかな笑みを浮かべる。
「まぁいいや。それより透、今日は水野さんをデートに誘うために作戦会議を放課後……ってあれ、いない……」
出て行った教室で伊織が何か言った気がするが、特に気にすることもなく足を進める。
今の俺……いや、今の俺たちに伊織に構う時間はないのだ。
学校から少し離れた、人の少ないところで二人を待つ。
なぜ学校で落ち合わないのかというと、最近三人で話したのだが「三人で帰ったりしたら、同棲してることバレね?」というわけで、こっそり待ち合わせしているのだ。
二人は気にした様子もなく「まぁ、別にいいけど」と渋々了承したが、俺にとっては死活問題。
面倒ごとは避けていきたい。……まぁもはやそれは不可能な現状ではあるけれど。
数分もしないうちにパタパタと足音が聞こえてきた。
「おまたせ~」
「待たせて申し訳ないわ」
「いいよ気にするな。それより、行くか」
「「……うん!」」
三人で並んで歩く。相変わらず俺を真ん中に挟む感じで。
「それにしても、ちょっと寒くなってきたねー」
早坂が寒そうに体を抱きしめる。
女子はスカートで生足が露出しているので、かなり寒そうだ。
「まぁ時期的には秋だけど、ここ最近急に寒くなったよな」
「そうねー。ほんっと、足が寒いわ」
外気に晒された、すらりと腰から伸びる白い足。
見てるこっちまで寒くなってくる。
「タイツとかジャージとか履いたらいいんじゃないか?」
「タイツはいいけど、ジャージは、ねぇ……」
「ね、ねぇ?」
「ふ、二人とも? その疑いの目、やめてくれます?」
「透くんは相変わらず、乙女心をわかってないというかなんというか……」
「困っちゃうわよね」
「……な、なんかすまん」
確かに女子に関しては疎いので、二人が何を想っているのかさっぱり分からない。
居心地が悪くなって頭を掻いていると、早坂がひょいっと俺の顔を覗き込んできた。
「ちなみに透くんは、生足と黒タイツ、どっちが好き?」
からかうような、でも純粋にただの興味本位で聞いているような、そんな表情を浮かべる早坂。
この質問も、どう答えればいいのか分からない。というか、考えたこともなかった。
「う~ん……」
二人から何かを期待するような視線を感じる。
これ、かなり重い選択なのでは……?
どうしたものか、と頭を回転させるも、結論は出ず。
いつも通りありのまま、素直に思ったことを言うことにした。
「黒タイツ、かな」
「へぇー意外ね。理由は?」
「理由は――生足だと見てるこっちが寒くなってくるから」
何気なく答えたのだが、訪れたのは沈黙。
ポカーンと口を開いて、見合う二人。
「「……ぷっ。あはははははははははは!!!!」」
「な、なんで笑うんだよ」
面白い回答をしたつもりは毛頭ないのだが。
「だってなんか……ねぇ美乃梨?」
「ほんと、ねぇ友梨?」
二人の心は通じ合っているようで、俺だけ取り残される。
早坂が柔らかく微笑みながら言った。
「なんか、透くんらしい答えだなって」
そう言って、二人はまた顔を見合わせて笑った。
俺は何が何だかわからずに、また困ったように頭を掻いた。
……仲が良くてよろしいことだ。
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