概要
日ノ国に遺る神器の一つを密かに継承する須佐一族は、国家安寧のため祈祷を続けていた。
しかしある時、その力を欲した勢力の襲撃により、隠れ里は崩壊してしまう。
生き残りは、長の娘にして巫女である星子ただ一人。
復讐の念に取り憑かれた星子の声に応えたのは、一振りの刀。
魔性のものと称される刀が発する思念は、星子の身を代償として仇討ちを請け負うと持ち掛ける。
無力な少女に選択の余地はなし。
かくして盟約は結ばれた。
星子を依り代とした刀は、宿主の大願成就がために嬉々として業を振るう。
二者の出会いはやがて、更なる戦乱の火種となって全土へ燃え広がってゆく。
土地の気脈を吸い上げ喰らい、我が物とする戦道。
それは刀に秘められし過去を辿る筋道でもあった。
往く手
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- ★★★ Excellent!!!フジヤマを超えた先にある感動
君も本編の一行目だけ見て「ついてけね〜」と思ってレビュー欄に逃げてきた口だろう?分かるよ。
はっきり言ってこの作品の文章は高い。余りにも高い。そんじょそこらのボケーとしながら読める小説もどきとは比較にならないほど高く険しい。険しすぎて近寄り難い。
でも待ってほしい。
この作品の文章は、つまり富士山なんだ。
富士山に登るのは大変だ。万全に準備して、時間を掛けて、少しずつ進まなくちゃいけない。引き篭もりの俺は一度も登ったことないが、多分この上なく骨が折れる作業だろう。
そんなに大変でも、富士山に挑む登山客は後を絶たない。なぜか?
登り切った先に確かな感動が待ってるからだ。
このレビューを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これまでに呑んだなかで最もおいしかったウヰスキーは……。
読者諸兄姉の諸君、私が今までに呑んだウヰスキーの中で最も美味だと感じた銘柄は、サントリーの『響』である。
件の『響』は、同じくサントリーの『白州』と『山崎』をブレンドしたものだ。
ウヰスキーの語源は、ゲール語で『命の水』との意味だそうだが、きついアルコール臭もなくするりと体に馴染む味わいはまさに完璧。
今回御紹介する『逢魔が刻の一ツ星』は、『響』の如く非の打ち所の全く無い、まごう事無き完璧な作品である。
妖怪変化が跋扈する平安時代に似た異世界が本作の舞台。
一人の老琵琶法師が演目を披露する所から始まる。
その後、盲目の琵琶法師が体験する悍ましき百鬼夜行……。
最初の頁を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!王道の純和風復讐譚
故郷を滅ぼされた少女・星子と、その身に妖刀・白星を憑依させ復讐する物語。
他のレビューにも記載がありますが、まずはその文章。初っ端から『和』の世界に惹きつけられ、没入感は圧倒的。正直和風というより『純和』と呼びたいですね。
ストーリーの方は冒頭から襲撃、窮地、そして妖刀との邂逅。序盤から緊張感のある怒涛の展開で息つく暇もなし。独特な世界観と共にどんどん引き込まれること間違いなし。
道中で仲間と出会い、そして復讐を進めていく。
『四 侵すもの』から迫力のあるシーンが多く、戦いの激しさも後半へ追うごとにどんどんスケールが大きくなり想像が掻き立てられました。反面ところどころ白星の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これぞ和という文章で描かれる世界に惹かれる
この作品の特筆すべきところはまず、文章だろう。これぞ「和」であるという文体は、作者の選び抜いた言葉とこだわりによるものだろう。
決してカタカナは使わず、言い回しも古風とし、けれど難解にはなりすぎず読みづらいということはない。むしろ重厚感のある文章によって和の世界は深みを増し、読み手をぐいぐいと作品の世界に引きずり込んで没頭させる。
殊に日本神話や伝承に詳しければ、登場する人物の名前にも、ああこれか、と思い、興味深く読めることだろう。もちろんそうでなくとも当然楽しめる作りというのは言うに及ばない。
そして殊更に魅力と謎ある主人公が、読み手を掴んで離さない。何を成すか、何者か。これだろうかと思う…続きを読む