依頼人の悪夢を喰らうことで生計を立てている夢喰屋のバク・エルクラートさん。少し打ち解けがたい彼に舞い込む悪夢解消の依頼は、どれも一筋縄でいかないものばかり。時には自分の身を危険にさらしつつ、依頼主の悪夢を食べて救います。
エルクラートさんの冷静で沈着な思考が様々なトラブルを解決してくれるので、ハラハラしつつも安心して読み進めることができます。
取り出した悪夢の調理方法が毎回美味しそうなので、お腹を下すと言われても食べたくなってしまいます。オニオンスープをお供に食べたい……。
私ごとで恐縮なのですが、わたくしめも絶賛大っ嫌いな幼虫(特にけむけむといもいもさん)系の悪夢を見まして、それを見たくないがため寝るのが怖い状況になっているので、ぜひエルクラートさんに食べていただけないかな……と思っています。味は保証しますヨ←
悪夢を食べる人型バク、この設定だけでかなり面白さを想像出来るのですが、それだけではありません。
一読されて見るとわかると思いますが、かっちりとした主役キャラの個性が確立されており、その語りから醸し出される作風は、その辺りのファンタジー小説にはない味わいがあります。
この空気感、かなり中毒性が高いかと思われます。
さらにストーリー展開に独自のテンポと方向性があり、間違いなく引き込まれてしまいます。オリジナリティを生み出そうと言う気概が溢れていると思います。
その上で世界観の作り込みがしっかりとされ、無駄に説明はされておりませんが滲み出る空気感はやはり特別であると感じられます。
雰囲気ある物語、お楽しみ頂ければ幸いです。
※読み合い企画からのレビューです
夢喰屋を営むバクの魔物である主人公・エルクラートは、すこし偏屈で美形の男性だ
そこに、フードで顔を隠した少女・クーアが客を連れてやってきたのだが──という導入から始まる本作品は、ある意味でグルメ小説とでも言えるほど悪夢の描写が細かい
悪夢にはしっかりと味があり、エルクラートはそれらを直接、あるいは調理して食べるのだが、それが、既知と未知の折り重なった非常に興味をそそられるものばかりなのだ
腹を下すと言われていても、一度は食べてみたい悪夢である
また、ストーリーテリングも抜群に上手く、物語と世界観とが合致しており、各キャラクターがこの世界で生きているのだという説得力がある
レビュー者はまだ第六章までしか読破していないが、どの章も良質な物語だった
主人公がバクという一風変わったハイファンタジー
すこしひねった作品をお求めなら、是非本作品を手に取ってみてほしい
人の"夢"を喰らう能力を持つエルクラート。
彼のもとには、夜な夜な悪夢に苦しむ者たちが訪れる。
魑魅魍魎が跋扈する世界で、彼の役目はただ一つ—— 夢の中に潜り込み、悪夢を喰らい、その根源を断つこと。
しかし、ある日持ち込まれたのは「魂が宿った絵画の夢を喰らってほしい」という奇妙な依頼だった。
それは、彼自身の過去、そして世界の秘密へと繋がる扉を開くことになる……。
幻想的でどこか不穏な空気が漂うダークファンタジー×ミステリー。
夢と現実が交錯するこの世界で、エルクラートが見つけた"真実"とは?
さあ、あなたもこの夢の続きを覗いてみませんか?
もし、バクが現実に存在したら?
悪夢を喰う「夢喰屋」を営みながら街で暮らしているという設定が、バクを現実の存在として強烈に印象づけています。
私が持ったバクの印象は、職人堅気。
その夢を喰うと、客と自分にどんなリスクがあるか、その上で仕事を請け負うかどうか、そもそも無礼な客など門前払い、など……。
バクの仕事ぶりは、まるで仕事に厳しい職人さんみたい。そんなバクの日常を見ているだけで、非日常的で不思議な世界観に浸れます。
そのうえで、個人的にもっとも注目する点は、猫。
猫の悪夢は美味しいらしく、バクは猫に夢中です。
作者の猫愛が溢れる作品、あなたもぜひ読んでみてください!
三章まで読了しましたが、レベルの高い作品だと思います。もっと評価されるべき
一人称固定の小説
語り手兼主人公がバクという魔物なんですが、人間でないがゆえの独特な価値観とか、人間社会に上手く溶け込んではいるけれども一歩距離を置いた視点とか、異種族だからこそ可能なストーリーテリングが魅力的です
また、「魔物が人間社会に溶け込んでいる」という世界観の構築も見事。法整備とか格差とか、作り込まれている一方で必要以上に説明している感じがなく、読み進めるうえでのスパイスとしてうまく機能していますね
「悪夢」が物語の根幹になっているけれども重すぎることはなく、バクにとっては食物なのでむしろグルメ系といっていいくらいの、ティータイムに読めるくらいほのぼのとした雰囲気がありました
頭の中に某カードゲームの「バグースカ」が思い浮かんだのは私だけでいい。
まず、「悪夢を食らう仕事」というアイディアが秀逸です。
他の数多くの小説の中でも実に珍しい、オンリーワンな設定が光ります。
そして、「悪夢も記憶」であり、「魂に深く根差した悪夢」を取り払う事に対して、それ相応のリスクが双方にある、という「仕事に対しての対価」への妥協のなさが実に好感が持てます。
鍵をなくした時の鍵屋さんみたいなもので、傍目から見たら簡単にやっているように見えて、セキュリティ上非常にリスクのある内容なので相応の技術料が発生する、というものに通じるものを感じます。
そして、かなりプライベートへのこだわりが強い事強いこと……。
決してお人よしの善人ではなく、現実的で人間臭いところがまた好印象です。
主人公の腕前を頼る場合は、本当にどうしようもない場合の「悪夢」に限られるかもしれませんが、その分確実で鮮やかな仕事を見せてくれることでしょう。
その「どうしようもない悪夢」がどんなものなのかを垣間見るというのもまた一興。
非常に良い作品です。
種族が『バク』である主人公(見た目イケメン!)エルクラートが、客の悪夢を喰う『夢喰屋』を経営するという、ファンタジーとして珍しい主題で……そして何より非常に面白いストーリー展開!
多くの人や魔物、猫や犬などの悪夢を「どんな味か」と綿密に描いてくれるので、更に「一風変わったグルメ小説」のようにも読めて、あらゆる点で楽しい物語です。
何よりキャラクターが良い! ヒロインのクーアちゃんは、ネタバレは避けますが辛い境遇などもあり、言ってしまえば「ツン」も多い子でしたが(そこも可愛いですが)……だからこそ「デレ」の破壊力が凄まじい!
主人公エルクラートと絆を深めていく様子は一生見ていられそうなほどでした。主人公もまた、クーアちゃんとの交流で、心揺さぶられて成長している様子が良いんですよね……尊し……。
文章力も高く、非常に読みやすいのも素晴らしい点。また素晴らしい実力を持つ作家様と出会えて、幸せ……。
引き続き、楽しみに読ませて頂きつつ……まだ読んでいらっしゃらない方も、是非ご一緒に楽しめればと! オススメしたいです――!