異世界の生き物たちは、どんな夢を見ているか? 新感覚異世界ファンタジー

これぞファンタジーの面白さだよ、と夢中になって読みました。

 なんといっても、切り口がとってもいいんです。主人公である『エルクラートさん』は、バクという『人型の魔物』として異世界に存在しています。そしてバクなので、やはり『夢』が主食。

 そんなバクの異世界での生活というものが丁寧に描かれていて、序盤から一気にこのファンタジー世界に引き込まれて行きます。『夢』を食糧として売っている店があり、そこに猫の夢などが出てくる。普段はそこで買い物をするなどして飢えを満たし、時には依頼を受け、やってきた客の夢を食べる。

 そこで出てくる客というのがまた面白い。セイレーンやバンシーなど、異世界における妖精や魔物に該当する存在。そういう存在の見る『夢』に触れ、それらを食べていく展開になります。

 夢にも色々あって悪夢とか予知夢など種類が分けられますが、人間以外のセイレーンなどは一体どんな夢を見るのか。このコンセプトが提示された段階で、俄然興味を惹かれるというもの。ここまで来たら、もうこの作品の虜になること間違いなしです。

 更に更に、展開としても気になる伏線まで登場。エルクラートさんがアップルパイと出会った時の話。
 『バクという存在は、カスタードのような味がしている。だから、カスタードの使われたアップルパイは食べられない』と述懐する場面が。
 一体、彼の過去に何が? 一体どんな状況で、彼は『カスタードの味』を口にすることになったのか。

 登場するキャラクターやその関係性も生き生きとしていて、とにかく読み手を飽きさせない作品です。緻密に作られたオリジナリティの高いファンタジー世界。そして気になる伏線の数々。
 まさに傑作です!

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