これぞ和という文章で描かれる世界に惹かれる

この作品の特筆すべきところはまず、文章だろう。これぞ「和」であるという文体は、作者の選び抜いた言葉とこだわりによるものだろう。
決してカタカナは使わず、言い回しも古風とし、けれど難解にはなりすぎず読みづらいということはない。むしろ重厚感のある文章によって和の世界は深みを増し、読み手をぐいぐいと作品の世界に引きずり込んで没頭させる。
殊に日本神話や伝承に詳しければ、登場する人物の名前にも、ああこれか、と思い、興味深く読めることだろう。もちろんそうでなくとも当然楽しめる作りというのは言うに及ばない。
そして殊更に魅力と謎ある主人公が、読み手を掴んで離さない。何を成すか、何者か。これだろうかと思うところはあれども、確信は掴ませない。そこがまた読み手の興味を惹くのである。
和が好きな方は必見です。ぜひご一読ください。

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