第12話 戦慄

あれから何日経ったであろうか。兄弟で2人暮らしであったはずの部屋に、俺は1人寝転んでいる。あの日以来……蒼李が内澤を突然撃ち殺して俺の前から姿を消したあの日以来、何にも手はついていない。割と真面目に大学に行っていたというのに、ずっと引きこもって錆びた銃と共にもぬけの殻と化している。




携帯を見ると、日付は6月17日となっている。相田からたまに来る心配の連絡を返して寝るだけの生活をどうやら1週間ほど送っていたようだ。相田は……アイツは、このループに気づいているというのに何であんなに気丈に振る舞えているんだ?正気を保つ秘訣とかはあったりするのか?……いや、アイツだってループに気づいた最初のうちはこうなっていたのかもしれない。でも皆……何とかこの状況に慣れて、普通の人間として生活できている。俺はもう、しばらく頭を使いたくないんだが……この"流れ"に従っていくしかない。この"流れ"にずっと従えなかった奴が……内澤、お前みたいになってしまうということだ。




「偶然……か」




内澤……お前は正気を失って狂ってしまったことを"偶然"と言っていたが、多分"必然"だと思うぞ。監禁・拘束をされ、目の前で人が自分の兄によって死んだ。俺はもう……そっちに行ってしまうかもしれない。それに……あの死体が見つかったら俺は……俺はどうなる?




ピンポーン!ピン!ピン!ピンポーン!




突然、インターホンが忙しく鳴った。宅配便を頼んだ記憶も無いが……何だろう?




ドアを開けると、そこには見知った顔の奴が立っていた。




「よ、久しぶり、貞李」




「おお……相田」




「ごめん、ちょっと家上がるぞ」




連絡は取っていたが、顔を合わせるのは白樺公園ぶりだ。突然どうしたのだろう?暗い部屋に敷かれている布団の上に、相田は「ふぅ」と息をついて座った。




「何か……久しぶりだな、お前の家に来んの。……大丈夫か?」




「……ああ、大丈夫だよ。それより、どうしたんだよ?」




「お前、やっぱニュース観てないっぽいな。……これ」




そう言って、相田はスマホの画面を見せた。そこには、ニュースの記事が映っていた。見出しには、"田舎の廃工場で高校生の死体が発見 銃殺と見られる"




「……これは!」




「これ、近くの廃工場で……内澤丸九って覚えてるか?そいつが、銃殺されたんだってよ。これ見て……俺らしくないと思うけど何か怖くなってさ。ループに気づいている奴が殺されるってこれ何かの陰謀……貞李?」




「……」




……どうすれば良いんだ?いや、でも俺は被害者なわけで……撃ち殺したのは蒼李だ。だけど、俺はその場にいたから疑われても何もおかしくない。……クソ、何でこんなことに……。




「おい、大丈……ん?……何だよ……これ?」




布団の奥で感じた感触。相田が震えた手で持ち上げたのは……銃だった。

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