第13話 窮地

「これ……何だよ、貞李」




「それは……」




……ああ、終わった。銃を隠さなくちゃいけないことくらい猿でも分かるのに、何で俺は一目散に玄関に向かったんだ?頭を使うことを拒否した代償か?どうしてこうも恐れていたことが立て続けに起こるのだろう。相田は震えながら完全に俺を犯罪者として見ている。……まあでも、言うか、正直に。信じてもらえるとは思わないが。




「俺の兄から貰ったんだ。内澤丸九は……狂ってて、俺は廃工場で監禁されて、挙句拷問までされかけたんだ。そのとき、俺の兄が助けに来てその銃で内澤を撃った。その後、兄は俺に銃を渡してどっかに行った。……それだけだ」




「……何だそれ……冗談か?」




「冗談じゃない……だけど信じてもらえないとは思ってるよ」




「……悪いけど、俺にはその話が信じられない」




そう言うと、相田は立ち上がって玄関の方へ向かった。こちらの方を向かず、一目散に歩いている。まあ……こうなるよな、そりゃ。俺だって突然友人が銃を持って誰かを殺した疑いがあるって言うんならこんな反応をするだろう。




「お前は大切な……というか唯一の友達だから信じたいんだけどさ……怖いんだよ、さすがに。……ごめんな」




「……ああ」




相田はドアノブに手をかけた。……これが、友人との最後か?




そのときだった。




ピンポーン。




また、インターホンが鳴った。今日だけで2回目だ。横にいる相田を尻目にドアスコープを覗くと、2人の男が立っていた。青い制服と帽子……警察か?何で……まさかバレたのか?




「……誰だったんだ?」




「……警察だ」




「え?」




「出るよ」




俺はこの時点で、色々と諦めがついていた。悪い方向へとどんどん滑って落っこちてくのに、ロープとはどこにも見つからない。……もう良い、どうせ8月9日を迎えれば全ては元に還るんだ。




ドアを開けた。そこには、眼鏡をかけた小太りな警察官と背が高くて強面な警察官が立っていた。2人とも30代半ばくらいであろうか。小太りな方が、落ち着いた口調で話し始める。




「えっと、すいません。警察の者です。近くの廃工場で銃殺事件が起きたってのは知ってますかね?それで犯人を捜さなくてはならないのですが……事件現場が本当に田舎なもので、そこらには高齢者しか住んでいませんでしてね。それで隣町の方にも取り敢えず聞き込みをしてるんですが……何か知ってますかね?」




……何だ、別に俺が事件に関係していることに気づいている訳ではないんだな。




「いや……特に知っていることは無いです」




「そうですよねえ。それで、そちらのお友達は?」




小太りな警察官は、俺の後ろにいた相田に話しかけた。相田は俺がこの事件に関わっていることを知っている。……というより、俺を犯人だと思っている。だから……相田、お前は……。

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