第6話 長すぎる1日

自宅のアパートの前につく頃には、いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。内澤のことをずっと考えていたので外がよく見えて無かったんだな。……まだ出会って1日も経っていないのに。




……内澤、今頃どうしてんのかな。もしかしたら、たった今死んでるのかもしれない。だが、このループがある限りは結局6月6日には蘇るのだ。……これを"残酷"と言わないで、何を"残酷"と言うのだろう。




アパートの下に無造作に置かれたヒビが入って汚れた花壇。色とりどりに咲く花の周りを何も考えてなさそうに白い蝶々がヒラヒラと舞っている。……何か、今日1日で頭がパンクしそうだ。俺も内澤もこの蝶々みたいに……あれ……?






○○○○○






何だこれ……?




突然、目に映る景色が変わった。電車の中……?満員電車で吊り革を握りながらスマホを触っている。……だが、俺は吊り革を握っている感触もスマホを触っている感触はない。目の前にいるサラリーマンの背中が頭にぶつかる……けれど、ぶつかった感触もない。それどころか、視線が自分で動かしている感覚は無いのに勝手に動く。というか、肌の色も着ている服も違う……しかし、見覚えはある。おい、これって……






○○○○○






「内澤?……え?」




いつの間にか俺はアパートの前にいた。この変な現象が起こる前の光景。




何だったんだ、これは?あの服、あの肌の色も確かに内澤だったと思うんだが……いやいや、どういうことだ?俺と内澤が入れ替わった……?そんなオカルトチックな現象って本当に起こるのか?




「何してんだよ、突っ立って」




声の方を振り返ると、兄の蒼李が不思議そうに俺を見ていた。確かに、弟が自宅の前でボーッと立っているのを見ると不思議がるのが当然だろう。




「ああ、ボーッとしてて……というか、今日は色々ありすぎて」




「え、何があったんだよ?」




言わない方が良いな、今日のことは。十中八九頭がおかしくなったと思われた病院に搬送でもされるのがオチだ。




「いや、何もなかったけど……とにかく疲れたんだよ」




「……そうか、絶対に何かあったっぽいけどな」




そう良いながら蒼李は階段をスタスタと上がっていった。何かあったということはさすがに20年近く共に生きてきた兄弟ということもあってお見通しらしい。






○○○○○






時刻は22時。今日は本当に疲れた。世界はループするわ、変な世界(内澤と入れ替わった世界?)に行くわ。考えなければいけないことは山ほどがあるが、取り敢えず寝よう。もう、頭を使いたくない。




……目が覚めたら全て無かったことにならないかな。

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