第5話 内澤丸九

その後、内澤と家が近かったこともあり、一緒に帰ることになった。道中、俺が知らなかったシルバーバーチのメンバーのことを教えてくれた。




まず、金髪の女性は名護優花なごゆうかと言い、タレントをしているが中々芽が出ず、水商売が主な収入源になっているらしい。




次に、スーツを着ている男の名前は町田宗介まちだそうすけ。スーツを着ていることも分かる通りサラリーマンをしているらしいが、どんな仕事をしているかはよく分からないとのこと。




そして、茶髪の美少女は田中花子たなかはなこという名前で、年齢も内澤とほぼ一緒で17歳くらいらしいが、学校には行ってないらしい。普段から寡黙で、シルバーバーチの集まりを開いても基本的に喋ることは少なく、そもそも来ないことも多かったらしい。




「……どうやったらこのループから脱出することができるんすかねえ」




別れ際、内澤は溜息混じりに言った。正直、このループから脱出する方法なんて見つかりようが無いのだが……。




「バタフライエフェクトってあるじゃん?」




「ああ……小さな行動の違いで、大きな結果の違いをもたらす的なヤツっすよね?」




「そう……だから俺が今回でループに気づいて、白樺公園に来たってことで何か変わったりとか……どうかな?」




もはや苦し紛れだが、そんな小さな希望にすがるしかないだろう。……何か知っている人はいないのだろうか。シルバーバーチのメンバーの人も内澤以外完全に諦めている様子だし。




「じゃあ……今回は2ヶ月後も生きることにしますかね」




「……生きる?」




「僕、毎回白樺公園の集まりが終わると自殺してるんすよ。……生きたくないんで」




あまりにも衝撃的すぎる言葉に空気が凍る。言葉も思うように出てこない。




「……え?」




「というか、元々色々嫌になってたんすよ。なんで、ループとか関係なしに7月くらいに自殺したら、何故か6月8日になって目が覚めてて。そこからループしてるって気がついて……公園で集まったりして……何か僕も変われんのかなって思ったら何も変わらなくて……だから、ずっと死んでます。何度死んでも、6月8日に生きてたならループ後に戻るんで」




「それは……何で?」




「……さあ、自分でもよく分からないです……すいません、変な話して。……これ、僕のメールアドレスなんで良かったらどうぞ。じゃあ、帰ります」




そう言って、足早に内澤は去っていった。俺の手の中には、内澤のメールアドレスが書き殴りされたノートの切れ端がある。俺には大した正義感もないし、頭も別に良くない。行動力もない。……だけど、これは流石に何とかしないといけないんじゃないのか……?




俺は、切れ端を強く握りしめた。

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