第4話 シルバーバーチ

「19回目……?このループがってことですか?」




「そう、19回目。神楽坂さんから聞いたけど、君は今回気づいたんだろう?何故だかは分からないけど」




今回で19回目……。つまりこの世界は既に18回6月8日から8月8日を繰り返していて、今回で19回目に突入するということ……そういうことか?




「つまり、ここにいる俺以外の皆さんはこのループを経験するのは19回目で、何故か俺だけが今回初めて経験すると……」




「そういうことだね……不思議だな…」




俺だけ、ループに気づいている人たちの共通点から外れている。目の前にいる6人も、俺のことを不思議そうに見ている。すると、真ん中の坊主の少年が口を開けた。




「いや……こういうこともあるんじゃないすか?そもそも、このループが19回目だという保証もどこにもないっすよ。もしかしたら僕たち6人がそのとき気づいたってだけで実際は100回くらいループしてるのかもしれないし……例外はいくらでもあるっすよ」




「まあ、確かにそうだねえ」




冷静な声で話したのは真ん中の野球少年(予想)。見た目のイメージと違って随分賢そうだった。




「……あの、私帰っていい?こんな公園で集まったってもう何にも分からないでしょ?この後も仕事あるから」




金髪の女性が口を開いた。こちらは見た目通り気が強そうだ。




「では、私もそろそろ失礼するかな。……仕事があるので」




「俺も帰るわ、大山川。色々気になることもあるけど、また明日話そうや」




「じゃあ君、また大学でバッタリ会うことがあったら……そのときは宜しく」




「……帰ります」




金髪の女性に続いて、スーツの男性、相田、神楽坂、茶髪の女性も帰ってしまった。何だか、世界がループしているという異常事態なのに皆全く焦っていなくないか?




「まあ、僕らがこのループに巻き込まれるのはもう19回目ですからね……」




「え?」




「確かループが3回目の時に僕がビラだったりネットの掲示板だったりを使って、白樺公園に集まるよう呼び掛けたんすよ。そしたら何とか僕含めた6人が集まったんですけど、まあ集まったところで何か変えられるわけもなくて……そのまま19回目突入って感じで、もう皆諦めてんすよ、色々」




「そうだったんだね」




ため息交じりに少年が話す。確かに、どうしてこんな現象が起こるのか解明するのはあまりにも困難だろう。しかも、一切のヒントはない状況でだ。




「僕結構ノリノリだったんすよ、白樺公園に集まったから"シルバーバーチ"で、代表は僕で……みたいな。これから世界の謎を解き明かすぞってノリノリだったんすけど、まあほとんど進展は無くて……今日少し進展しましたかね。大山川さんが来たんで」




「シルバーバーチってそういうことだったんだ……あれ、てことは内澤丸九って君?」




「そうっすよ、キラキラネームですよね」




「いや、まあ……」




会話はそこで途切れた。辺りはもう暗くなり始め、気づけば街灯が少し点いている。内澤は、遠くの方をじっと見つめていた。その目には、希望か、あるいは絶望のどちらを映しているのか……。おそらく後者だろう。

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