第25話 リフレイン
『これは……お前に必要なものだ。受け取ってくれ』
何だ突然……? 脳裏に浮かぶのはあの時の記憶。廃工場、内澤、蒼李、銃……。蒼李……俺に銃が"必要"ってそういうことだったのか?
蒼李……お前は何を知ってる? お前は何を見ている? どうして俺の前から消えた?……分からない。……まだ、分からないことだらけなんだ!
ポケットから銃を出して構える。もう後先を考える余裕はない。ただ引き金を引いて撃つ!
パァン!!!
「うぐっ!!!」
「ちょっ……少年!?」
「……」
弾丸は神楽坂の肩に直撃した。神楽坂はナイフを落とし、右方向へ体勢を崩しながら駆けて行った。血が滲んでいる肩を押さえながら俺の方を睨んでいる。
「……クッソ」
「……もう一度襲ってきたら、また撃つ……ぞ」
俺の声も銃を持つ手も情けないくらいに震えている。だけど、その銃口だけは確かに神楽坂の方を捉えている。……俺はここで死にたくない。
「……取り敢えずは打ち止めか。じゃあまた」
そう言って神楽坂はまた高速移動で公園から抜けて行った。建物の屋根や壁、木を伝って俊敏に逃げていき、すぐに見えなくなった。
「おい、少年」
「……はい」
相羽さんが俺を見て、まだ煙が出ている銃口を手で押さえた。
「……相羽さん?」
「……正当防衛だよ、それに死んでない」
「……」
「……いくらここら辺が田舎で人も少なくてザルだって言っても銃声がヤバいかもしんないから。……早くここから離れよう」
「……はい」
俺と相羽さんは小走りでその公園を後にした。歩いている途中でもいつも饒舌な相羽さんの姿は無く、黙って下を見続けていたため表情は確認できないが……ただ、ずっと俺の服の袖を掴み続けていた。
〇〇〇〇〇
結局、"Juicy Dragon"の前まで来た。
「じゃあ、ここらで……」
「そうだね……あっ待って」
相羽さんは俺に付いていた盗聴器を外した。
「これ、ごめん。……だけど、助かったでしょ?」
「ああ……はい」
「私も多分、君の銃が無かったら死んでたさ。他人から押し付けられたものって意外なところで効力を発揮するものだね」
「……はあ」
「……ありがとう、それじゃ」
そう言って、相羽さんは夜の闇へと消えていった。
LIFE IS SPIRAL ジーニー @ShinonoMe10
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