第24話 The Time is Now
「さーて、調査団の規定にはループやその他事象に関する重要情報は共有するってのがあるけど……神楽坂ちゃん、あんた滅亡だとか何とかかなり重大そうな情報をご存じのようで?」
「……」
「黙ってたら逃げられるとでも?……それと少年、君はもう少し頭を使いなよ?」
「……頭を使う?」
相羽さんは神楽坂の頭をポンポンと叩きながら言った。
「そう。世界滅亡の危機に蝶の継承能力を使えるとして、大山川君と出会う前に樋口さんと会ってたのにそれを言ってない。『私は君に来てほしい』なんて戯言、仮に世界が滅亡するってんなら通用しない。つまり、樋口さんより君を連れていく方が都合が良いと考えてる……そういうことでしょ?」
「……」
「樋口さんより大山川君の方が都合が良い理由って何だろうね? 目の前で言うのも悪いけど、樋口さんの方が君よりおそらく頭脳や体格が優っている……そして、交番勤めの警察で拳銃の所持が認められている。どうだろう、何かと"強そうな"人物だと都合が悪いのかな?」
「……」
「世界滅亡の危機で"強そうな"人物だと都合が悪い……」
相羽さんはどうしてそこまで頭が回るんだ?……はたまた俺が馬鹿なだけなのか? 分からないが、言われると確かに違和感を感じる。そして、神楽坂は依然黙ったままだ。
「世界滅亡とかはどうせ嘘で、とにもかくにも神楽坂ちゃん……君は蝶の継承能力を持つ人間を必要としている。そして、"強そうな"継承者だと都合が悪い……少年、もしもついて行ってたらどうなったもんか分からなかったぜ?」
相羽さんは依然黙りこくったまま下を見ている神楽坂の頭から手を離し、俺のそばに立った。
「で? さっきからずっと黙ってるけど何か言えば?」
「……」
「……喋れよ」
「……ってて」
「え?」
神楽坂は小さな声で呟いた。何を言っているかはよく聞き取れない。
「……何て?」
「待ってて、サネハアアアアアアア!!!」
「……おい!?」
神楽坂は突然何か叫んで走り出し、公園に落ちている小石を街灯に投げつけた。
カーン。
金属音が公園の静寂に響く。
神楽坂は公園の隅の方まで走っている。
……何してんだ?
「……! 少年、逃げて!」
「え!?」
神楽坂は突然方向転換し、目にも止まらぬ速さで俺の方へ迫ってきた。
「うわあああ!」
「避けて!」
相羽さんの声を聞き、間一髪で顔に迫りくるナイフをかわした。……あと数センチで右耳に当たるところだった。速さの反動か、また公園の隅へと砂埃を上げながら滑って行った。あの速さ……完全に人外だ。これも蝶の継承能力か? けれど、翡翠眼ではない。
「少年、また来るぞ!」
「くっ!」
また神楽坂が迫ってきた。俺は死ぬのか……!? どうすれば良いんだよ……!
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