第20話 友人と真実

階段を上がって少し離れたところにある席に座り、名護さんは話し始めた。




「さっきは色々ごたついてごめん。じゃあ、まずはあんたから。聞きたいことって?」




「えっと、まず……シルバーバーチについてです。名護さんもそうですけど、内澤と相田と俺を除いたシルバーバーチの4人がこの調査団にいたので。これは単純に2重所属していたってことですか?というかこの調査団はいつからあるんですか?」




「この調査団は1回目のループで即座に作られたよ。樋口さんも七菜香さんも行動力がとてつもないから、ネットやらビラやらを駆使して一気にメンバーを集めて、確か1か月くらいで今の10人が揃った。一応全国に情報を発信したのに、集まった10人が皆この地域に住んでいるのは不思議だけどね。それで、8回目か9回目かのループの時に突然白樺公園で『この世界はループしている』なんて言って人を集めた2人組がいたもんだから、私を含めた4人がそこに所属して情報を探ったってわけ。それで……」




「ちょっと、すいません! 2人組って……シルバーバーチは内澤1人で作ったんじゃなかったんですか?」




内澤は、確か俺と一緒に帰った道中で1人でシルバーバーチを作ったというようなことを話していた。もちろん、内澤が嘘を言っている可能性は高いのだが……それも嘘なのか?




「違うよ。さっき、私はあんたと2人で話したいって言ったけど……この意味、分かるでしょ?」




「……まさか」




「シルバーバーチは、相田龍太と内澤丸九によって作られたものよ。あの2人、結構仲良さそうだったけど」




名護さんが、2人での会話にこだわった理由はそれか……。というか、相田が内澤と一緒にシルバーバーチを作ったなんて……驚きを隠せない。俺の家に内澤の死を伝えに来た時もあいつの表情からかなりの恐怖や悲しみが伝わってきたが、まさかそういうことか……?




「1回目のループの時に既に調査団のことは知っているはず。だけど調査団には入らず、独自の集まりを作った彼ら2人に私たちはある程度の警戒をしていたの。何故なら私たちはこの現象についての知っていることがほとんどないから……もし私たちが調査団と知られたら……突然殺されたり、情報の共有を強制されたりなんて可能性も無いとは言い切れない。だから、私たちは自分たちが調査団とは明かさずに、彼らがどこまで知っているかとか何を企んでいるのかとかを知る必要があった。まあ、結局は2人とも知っていることはほとんどなく、おそらく企んでいることも無いだろうって結論に至ったけどね」




「……そんなことが」




「だけど、2人のうちの片方は私の弟を拷問殺人するサイコ野郎だってことも途中で分かってたけどね。口封じされてたから、調査団にも誰にも言えないまま過ごしてたけど、まさか銃殺されるとはね。しかも、私があんたに内澤に警戒するよう言ったその日にね。……多分あんたは副団長の名字がどうのこうのって聞きたいんだろうけど、一旦私にも聞かせて。あの日何があったのか、それとあんたとサイコ野郎の共通の友人のことも」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る