第19話 信頼

「名護さんってあの金髪の人か? 何であの人?」




「この調査団のメンバーの中で、俺がお前の次に信頼してるからだよ」




「……!」




相田は、驚いたような、そして少し喜んでいるような表情を見せた。






○○○○○






「久しぶりです、名護さん。この調査団のことについて、聞きたいことが山ほどあって……」




真ん中のソファで座っていた名護さんに声をかけた。俺を見ると、少し微笑んて言った。




「ああ、生きてたんだ。丁度良かったよ。私もあんたに聞きたいことが山ほどある。けど、私はあんたと2人で話したいんだけど。……そっちの方があんたにとって都合も良いでしょ?」




「え、いや俺も聞きたいんですけど」




「後から大山川に教えてもらえれば良いでしょ? 会話は基本的に2人が一番円滑に進むのよ」




「……ええ?」




相田は不満そうにしている。おそらく名護さんが俺との2人の会話を望むのには、内澤の死について話したいこともあるからだろう。相田は俺が銃を所持していることを知っていて、また俺に内澤を殺した疑いを少なからず持っている。確かに、3人で話すと話が色々と混乱する可能性が高い。




「……分かりました。まあ後で聞いたことは伝えるよ、相田」




「……ああ、まあ分かったよ」




「じゃあ上で話そう。ここだと人が多いし」




そうしてアジトの階段へと向かおうとした時だった。




「へえ、すごいね優花。もう信頼を勝ち取るかあ。相変わらず上手いねえ」




ソファで寝っ転がっていた相羽さんが体を起こして言った。俺の方を見てニヤニヤしている。




「優花、こういうのがタイプなんだ? いつもの水商売のスキルを使えばどこぞの少年Aの心を掴むのも容易いってわけね」




「相変わらず的はずれに人を分析するのが好きみたいね、潤葉。私につっかかってきて何が言いたいの?」




「いやいやいや、そりゃあねえ」




相羽さんはそう言いながら立ち上がり、俺の腕を強くつかんだ。




「またこうやって誰かを不幸にするんだ……って思うとねえ。そりゃあつっかかりたくもなるよ。ねえ、町田さん?」




ソファでこちらを心配そうに見ていた町田さんに相羽さんは突然声をかけた。




「え? わ、私か?」




「誰かが不幸になるのを止めるって普通ですよね?」




「ま、まあ……」




「もう良い」




名護さんは俺の腕を掴んでいる相羽さんの手を叩き、俺の手を引きながら言った。




「そうやってずっと嫌味を言うだけの人生に価値を見出せているなら、私は別に構わない。潤葉がそうなったのも私のせい……そうでしょ? だからもう良い。……行こう」




「……すかしてんじゃねえよ」




相羽さんの言葉を背中に受けながら、名護さんは俺を連れて早歩きで階段を上がっていった。名護さんは、まさに苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。それを見て、俺はこの一連の会話について聞くことはできなかった。

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