第22話 あの場所へ
「よし、じゃあ先に説明した通り今日からこの2人……相田君と大山川君が入ることになった。そして、大山川君の方は何と樋口と同じく蝶の継承能力を持っている。まだ分からないことの方が圧倒的に多いけど、これで謎を解く鍵が増えたということは確かだ。まあ、これから滅茶苦茶顔を合わせることになる2人だから、仲良くしてあげてね。じゃあ、今日のところはこれで解散ってことで」
ちょうど階段を下りたところで七菜香さんの号令があり、この場は解散となった。時計の針はもう10時を指していた。
「じゃあ、俺たちも帰るか。名護さんから聞いたことは後で連絡するよ」
「ああ、じゃあよろしく」
皆が続々とアジトから出ているのを見て、俺と相田も足早に帰ることに決めた。もちろん、相田が内澤とシルバーバーチを結成したことについては触れないようにすることは心に決めている。
「大山川君、ちょっと良い?」
相田と階段を上がろうとしたその時、神楽坂から声をかけられた。
「ああ、大丈夫だけど」
「話したいことがあるんだけど、時間ある?」
神楽坂は携帯で時間を確認しながら言った。喋りかけられたのは大学の掲示板の前で声をかけられたあの日以来だ。
「まあ、あるけど……」
「俺はバスの時間あるから、先に帰るわ」
「あ、じゃあな」
「おう」
相田はバスの終電時間を気にして先に上がって行った。もう、地下のアジトには俺と神楽坂以外誰もいない。
「えっと、ここで話すの?」
「いや、そしたら七菜香さんに迷惑だから……違うところで話そう。七菜香さん、ここの店の店長で最後に戸締りしなくちゃなんないから」
「ああ、そうなんだ」
白衣姿だからどこかの研究所で働いているとかだと思ったけど、まさかのファミレス店長か。……やっぱり、人は見た目や雰囲気で内面を判断しちゃいけないな。
〇〇〇〇〇
神楽坂が、俺の前をスタスタと歩いていく。「落ち着いて話せる場所に行こう」とだけ言われてついて行ってしばらく無言の時間が続いていたが、とある場所に着いた頃に神楽坂が口を開いた。
「何だか懐かしい……6月8日にも同じことがあった気がする。私が君を連れて歩いてここまで来て……これはデジャブってやつかな?」
「……ああ、確かに。てか、あれからまだ1週間くらいしか経ってないんだな……」
辿り着いたのは、白樺公園だ。昼間でもあまり人気が無いこの公園は、夜になれば静けさを増して完全な静寂に包まれる。何か話をするには少し静かすぎる気もするが、まあ落ち着いて話すことはできるだろう。俺たちは白樺の木の前で立ち話をすることになった。
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