第15話 蝶と眼

「いや、突然選ばれし者とか来てくれって言われても……よく分かりません」




「君は、この世界が同じ時を繰り返している現象に気づいている……そうだろう?」




「……! はい、そうです。俺の後ろにいる相田も……」




「はい、俺もこのループに気づいてます」




「なるほど、君も……そういうことか。2人とも知っているのなら、ここで話をしても構わないな……立ち話もなんだから奥でどうだ?」




「ああ……はい」




そう言って、相田が来た時と同じく警察官は奥の部屋の布団の上に座った。この警察官は、ループ現象のことを知っている。おそらく、俺や相田以上に知っているだろう。3人とも座ったところで、警察官が話し始めた。




「改めて、私の名前は樋口改道ひぐちかいどうだ。よろしく」




「えっと、俺は大山川貞李で、こいつが相田龍太です……よろしくお願いします」




「では、話を再開しよう。まず、この世界がループしている……そしてそれが今回で19回目に当たるのは承知の通りだとは思う。そして、君……大山川君の眼が翡翠色に変化した。一時的にな。これは、蝶の継承能力を発動した際に見られる翡翠限と呼ばれるもので……」




「ちょっと待って!ください!蝶の継承能力だとか翡翠眼だとか一気に言われても……頭が追い付かないです。1つ1つ説明してくれませんか……?」




「ああ、すまない」




突然の情報の連鎖に頭が混乱してしまった。というか、この人はどこまで知っているんだ?そして、何で知っているんだ?その後、樋口さんは「そうだな……」と少し間を開けてから話し始めた。




「蝶の継承能力……まあが勝手にそう呼んでいるだけなんだが、蝶と対称人物を同時に意識すると発動する能力で、この能力を発動する間は眼が翡翠色になる……だから翡翠眼だ。そして、この世界のループに気づいている人も限られているが、この能力を持つ者もまた少数だ。君は、おそらく意図的では無いだろうが、この能力を発動させていただろう?」




「はい……さっきと、あと以前にも能力を発動したことがあります。今回は、あなたの制服のボタンに蝶の柄があって多分そこから……以前は花壇に蝶が飛んでいるのを見て……。視点が自分の視点ではなくなるというか、おそらく思い浮かべた人の視点を一定時間得ることができる……おそらくそういう能力です」




ということは……以前アパートの花壇の前で得た視点は、内澤の視点だったということだ。電車の中で揺られているあの光景は、そのとき内澤が見ていた光景……何で俺がこんな能力を持っているんだ?




「なるほど、"視点"か。……この能力を持っているのは先程少数だと言ったが、つまるところ私と君だけだ。私の知る限りではな」




「……あなたもですか!?」




「ああ。だが、私と君の能力には大きな違いがある。君の能力を、仮に"視点の能力"と名付けるならば……私は"身体共有の能力"だ」




そう言って、樋口さんは大きな能力をカッと見開いた。それは、紛れもなく翡翠眼だった。

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