第9話 廃工場

結局、その日は内澤に急用が入って廃工場へ行けなくなったとの旨をメールで伝えて家路につこうと考えた。だが、廃工場がどのような場所か気になる。外から見たことはあるが、中の様子は分からない……というか、入れるかも分からない。廃工場にはオカルトの噂が絶えないのでここらの地域では有名なのだが、立ち入ってはいけない雰囲気が立ち込めているため遊びで工場に入る人は少ない。




じゃあ、行ってみるか。断りのメールも入れたし、内澤は多分いないだろうし……というか、少年1人がどうやって人一人を拷問したり殺したりができるんだ?拷問するということはつまり拘束が必要となるが、そんなことできるだろうか?……とにかく、疑問が多いな。






○○○○○






最寄り駅から電車で一駅。田んぼに囲まれた田舎の中の田舎。駅から徒歩で5分ほど歩いた先にある……あった、東の廃工場。辺りはだだっ広い土地が野放しにしてあるのみで、人通りはほとんど無い。薄汚れたコンクリートでできた真四角の建物。夕方なので特に不気味な雰囲気は感じないが……"立入禁止"のテープが貼られていたり看板が置いてあるわけでも無いんだな。




工場どでかい扉が開いている。取りあえず入ってみると……別に何も無かった。中はとても広く、学校の体育館みたいだ。暗くてよく見えないが、おそらく特に置かれていたりするものは無いだろう……拷問とか何たらできるようなものもないし……まあ、帰るか。変な好奇心が働いて来てみたけど何も無かった、そういうことだ。……そう言えば、内澤からメールの返信来てるかな?




☆☆☆☆☆




ダウト




了解っす




☆☆☆☆☆




来てた。ダウト?どういうことだよ?まあでも、了解って書いてあるし……。




「……ッ!?」




突然だった。頭に激痛が走る。視界が揺らぎ、おもわずその場に倒れる。




「いってぇ……」




鈍器が何かで殴られたか?血が自分の頭から滴っているのが分かる。意識が朦朧とする……やばいな、これ。誰かに襲われたのか?遠のいていく意識の中では頭を上げることすらままならない。だが、誰かに襲われたとして……襲った人物の見当はついている……まさか、本当だったとは……。




「……ダウト……っす」




それは、聞き覚えのある声だった。

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