第5話
結局、試合に負けてしまったが、神下を心配した先輩方がジュース奢りを免除してくれた上に保健室まで運んでくれた。
何だかんだ良い先輩たちである。
次の日、部室の扉を開けると神下が一人でいた。
いつもは(少なくとも依頼がないときの部室では)クール文学美少女決め込んでいる彼女だが今日は分厚い本を枕に突っ伏していた。
「古木くん? もし依頼者の方ならごめんなさい。もうすぐ部員の男子生徒が来ると思うから待っててくれるかしら……」
神下は微塵も張りの無い声でそう言った。こいつ今日授業中どうなってたか見てみたいな。
俺は彼女の代わりにお菓子とティーパックを袋から取り出す。
「その部員の男子生徒だよ」
「そう……」
「ポットに水入れてくるわ」
「ありがと……」
そこまでしんどいなら部活休みでいいんじゃないのか。そこもあいつの変な意地なのか自分に鞭を打ってでも学校に来たらしい。
部室に戻った俺は電気ポットのスイッチを入れる。
「そこまで無理して部活やらなくてもいいんじゃねぇの」
「ん……、流石に今回は懲りたわ。自分の限界をわきまえないと……。浜辺さんにも先輩方にも迷惑かけてしまった……」
何だか微妙にずれた返答をされてしまいそこで一度、会話が途切れる。
「そういえば、浜辺はどうした? 今日も例のテニス部員の指導か?」
「ん……」
本当に休めばいいのに。今日は金曜だし俺もたまには早く帰ってゲームしたいんだが。
「ちょっと、お手洗い……」
神下がフラフラと部室を出ていく。
彼女が枕にしていた本の帯には「0から始める基礎体力の付け方」と書いてあった。
まあ、なんだ……。
今日は最後までいてやるか。
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