第2話 

 何やらよく分からないことになってきた。しかし、部活が決められずに困っていることは事実なのでそれのサポートをしてくれるならありがたいと言うべきだ。

 何でも部とやらの部室は机が2×3で並べられ、窓際にはホワイトボードと使われていないイスが幾つか。


 そのイスを浜辺が俺の元へ持って来る。どうやら座れということらしい。続いて神下が紙コップに入ったお茶を俺の側に置く。

「どうぞ」

「どうも」

 よく分からない状況に疲れていたのかお茶がやたら美味く感じた。

「それで、まずはあなたは入る部活を決めかねている。それでいいのよね」

「ああ」

 この萬高校は特に事情が無い限り部活動必須となっている。特に入りたい部活も無い俺は運動は苦手だからと早々に運動部という選択肢を捨てて、この文化部部室のあるとこに来たわけだ。

 とりあえず、楽な部活。欲を言えばアニメ研究部みたいな部に入りたかった。


「無いわよ、そういう部活は」

 俺は自分の意思を伝えたが神下の一言に一蹴された。


「えーと、この学校の文化部は吹奏楽部、美術部、文芸部、演劇部、英語部、科学部、軽音部、合唱部、茶道部、新聞部、パソコン部」

 浜辺が新入生向けパンフレットを抑揚の無い声で読み上げる。

 そういえばそんなもの貰ったなと思う。入学式から2週間近くが経とうとしており、失念していた。ついでに言うと2週間以内に部活を決めなければならず、明日が期限である。


 ふむなるほど、文芸部は意外と俺の要望に叶っているのかもしれない。

 活字はラノベくらいしか読まないが他と比べると楽だろう。しかし、レベルが計り知れない。賞を受賞したことがある部員がいれば自分の文学力とやる気の無さは悪目立ちしてしまう。

 パソコン部はワードやエクセルが特別使える訳ではないがタイピングの速さだけは自信がある。しかし、資格取得を目指したりする気概のある部活なら辞めておきたい。

「いや、入りたい部活がないな……。もっとこう、楽っていうかさ」


「えーと、ちなみに運動部は野球、サッカー、バスケ、ソフトボール、バレーボール、テニス、卓球、ラグビー、水泳、陸上、剣道――」


「ちょ、ちょっと待ってくれ……! そういやあんた達、何でも部だっけ?」

「運動部じゃないよな? さっきの文化部のリストには無かったけど」


「あー、ウチらは一応文化部なのかな。2人で創ったの」

「文化部よ。申請書類上ではね」

「は? 創った?」


 創部だと? そんな仕組みがあることは知らなかった。

 それが通るのならば俺がアニメ研究部を創ることもできるんじゃないか?


「ほら、生徒手帳のここ。」

 神下が生徒手帳の一文を指差す。

『生徒は必要書類を提出し、許可を得ることで部活動を発足できる。ただし、最低でも2名の生徒が参加する必要がある。なお、参加生徒5名以下の部活動に予算を付けることは原則として出来ない。』


 ならやっぱり俺でも何部か創れるんじゃないか。問題はもう一人の部員を連れてくるあてがないところだ。

 そう考えているとコンコンとノックされ部屋の扉が開けられた。


「あの、何でも部はここですか? 依頼があるんですけど……」

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