萬高校には「何でも部」とかいう変な部活がある

エフ太郎

第1回 意図せぬ選択を迫られて

第1話

「いや、俺は別にここに入部しに来たわけじゃなくて――」

「じゃあ依頼者! 依頼者だね! はい依頼者1名様ごらいてーん! 」


 ポニーテールの女がグイグイと俺を部屋の中まで押しやる。

 俺は入る部活が決められず文化部の部室がある東棟の3階を徘徊していた適当にこの教室を覗いたが最後、見知らぬ女子生徒に捲くし立てられるように奥まで追い込まれてしまった。


 この奥にはもう一人の女子生徒がいた。

 肩にかかる長い黒髪ロングに端正な顔とそれに釣り合ったスラっとした体。

 読書していた彼女は本を閉じ、こちらに向き直る。

 読書しているとはここが文芸部か? と思ったが先ほどポニテの女が俺のことを依頼者だのなんだのと言ったのを思い出す。

 

 はて、ここは何部なのだろうかと思っていると「浜辺さん、入りたくない人を無理に入部させることは無いわよ」とロングの女が言う。

「ゆきなちゃん、でもでも男手があった方がよくない?」とポニテの女が返す。

「それにまだ入りたくないかちゃんと聞いてないし? 依頼者かもしれないじゃん?」

 浜辺さんと呼ばれたポニテの女はそう言って俺の方を見る。

「あのー……」

「あなた、名前は? 」

 もういいですかとここから早く出ていきたかったが言葉を遮られた。

古木純一郎ふるきじゅんいちろうです、1年A組。ここって何部ですか?」

「ここは何でも部! 私が浜辺繋希はまべつなきでこっちが部長のゆきなちゃん!」

神下かみしたゆきなです。どうも」

 そう言って神下は会釈する。

 何でも部……?

「俺は部活が決められずにフラフラ見てただけで、別にこの何でも部に入ろうって訳じゃ……」

「じゃあじゃあ! 古木くんだっけ? 君の部活選択をサポートするのが何でも部の依頼第1号と言うことで 頑張ろう、オー!!」

 浜辺が右腕突き上げ如何にもな感じで気合いを入れると、座ったままの神下もちょこんと腕を上げる。


おいおい、どういうことだよ。


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