第2回 限りなく黒に近い茶色、それと黒
第1話
紆余曲折を経てバトミントン部部長からの依頼を解決した3日後、俺は文化部の部室が集まる東棟3階の一室にいた。
ここは何でも部というちょっと変わった部活の部室。
それはある意味俺の希望通りの楽な部活動ではある。こうしてくつろぎ全開の姿勢でラノベを読んで下校時刻まで過ごすだけで立派な部活動である。
その立派な部活動を行っている部活の面々の一方はティーカップを片手に優雅に読書し、もう一方はスマホをずっと弄っている。
机を長方形に並べた真ん中には個包装のお菓子が皿に盛られており皆思い思いに手に取る。この部は部費が下りないのでこれは神下の自腹なのだろう。
本当に部長女史様々である。
ちなみに例の依頼解決の次の日、俺は往生際悪く幽霊部員になってやろうかと教室から直帰を謀ったが我が部は幽霊部員を許さないとの断固たる意志か、昇降口前で待ち伏せされていた。その気概の強さには流石にちょっと引いた。
結局は住めば都というやつか。人間の慣れは恐ろしいもので、ここ3日で完全に放課後はこの部室でお茶を飲み、お菓子を食べ、ラノベを読むことが完全にルーティーンと化し、この状況を甘んじて受けてしまっている
しかしこれは部活を名乗っていいのだろうか。
「そういや、バト部だけどさー。あの男子2人とも今のとこ来てるみたい」
「そう、ならよかった。依頼通り部費も下り続けるでしょうね」
「なんかさ、部費でユニフォーム買うんだって! あと菓子パするって!」
「そういえば彼女たちまだ体操着だったわね」
「ていうかフルっちさあ、LINEのアイコン何かセットしたら? 一瞬誰こいつ?ってなるからさ」
部費で菓子パ、お菓子パーティーを催すのは使い道としてどうなんだろうか。こちとら(部長の)自腹で毎日菓子パみたいなものだがな、などと適当な思想を巡らせていると突然こちらに話を振られた。
「あーうん、また考えとく」
「それ絶対考えないやつじゃん!」
その後も神下と浜辺は会話を続ける。とは言っても浜辺の振る話題に神下が相槌に近い返しをするだけ。
数分間続いたその語らいも突如、扉を向こう側から叩く音によって切り上げられた。
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