第3話
残念ながらめでたしめでたしとはいかず1週間ほど経った今日、3人で例の箱を見回ったが入っていた本は少ない。それも半分くらいは小学生向けの本だった。
目立つだろうと購買部近くに設置した箱に至っては幾らかゴミを捨てられていた。
「う~ん、意外と集まらなかったね」
「そうね、最近はみんな本を読まないから。何となく予想はしてたわ」
なるほどな。ゴミ箱扱いされたのは論外として、最近は娯楽も増えて読書している人は昔より減っているからな。
俺は
しかし、そういう人はコレクションとして手放したがらないだろう。加えて、電子書籍は譲るということができないので隠れた難敵である。
さて、いつもやる気200%の部長はどうするのかと思えば、一言「もう少し待ちましょう」と言って寄付された本を持ちながら部室へ戻っていった。
「浜辺さん、今回のテストはできそう?」
「マジでテスト超ヤバくてさー、数学全然わかんない!」
「因数分解は簡単な方だと思うのだけれど……」
部室にて、テストについての話が始まったかと思えば神下と浜辺が家庭教師と生徒のようにな構図になっていた。どうやら浜辺は勉強は苦手らしい。この萬高校は割と偏差値が高い。それでも彼女は実際、入ったのだからなかなかに無理を通したようだ。
やがて浜辺の出来の悪さに神下が「授業ちゃんと聞いてる?」の一言を発したのを皮切りに浜辺は意気消沈し、完全にテスト勉強へのやる気を消失していた。
気付けばテストまで2週間を切っており、真面目な生徒は真面目に勉強するころだ。
俺は1夜漬けとはいかなくとも2日漬けぐらいで勉強するのでまだいいかなと今日もいつも通り部室で過ごす。
浜辺がスマホをポチポチしだすと困り顔をしながら神下は諦めたように席に戻り、先ほど回収した本をパラパラとめくり出す。
「ていうか、この依頼このままでいいのかな~」
「どうしようもないんじゃないかしら、最善は尽くした……と思うわ」
そう言って神下が俺の方をチラリと見る。
「ああ、寄付していいって本持ってるやつは限られてるからな。無いもの出せと言われても困るだろ」
悪いがいつも何か思いつくわけじゃない。あのときはたまたま奇跡的に何かひらめいただけだ。だがそれだって、成功を確信していたわけじゃない。
「う~ん……」
またしても浜辺は机を顔とくっつけながら唸る。
「今日は帰る……」
拗ねたような顔で浜辺は席をたつ。
「さようなら、また明日」
おおっ! これまさかいざこざじゃないよな?
俺は2人がどうやって仲良くなったか未だによく知らないし、部室以外でどうしているのかもよく知らない。
クラスが同じことは知っているがそれだけだ。
神下は教科書をめくりながらノートに何か書き込み始める。
こいつは真面目だなーと思いながら俺はまた本を読み進める。
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