第6話

「なるほど、お前の考えはもしかしたら正解かもしれん。それが真相だったとしてどうやって見つけるんだ『校則違反していた人を探してます』とは言っても名乗り出てくれんだろ」

「カラーは結構匂い強いよ! もしかしたら近くの席の人は気づいたかも!?」



 その後、浜辺の友達ネットワークと何よりそこまで漕ぎ着けた神下の推理によりF組の金田という男子生徒の存在が浮上した。

 金田はこちらの推理を聞くとすぐに自白した。彼は高校入学に際して気持ちが大きく浮つき、髪も染めて眼鏡からコンタクトに変えたが結局は髪色と同時に眼鏡に戻しており、今は一時の気の迷いを後悔しているらしい。神下の似顔絵は眼鏡が無かったせいで真価を発揮しきれなかったようだが事の顛末はほぼその推理通りではあった。

 依頼者の野村とは連絡先を交換したりして順調らしい。

 めでたしめでたしである。



 依頼者無き日常へと戻った部室で俺はまたラノベを読み進めていた。

 ご機嫌な部長さんはお茶受け菓子にちょっとお高いやつを並べる。


「古木君もお茶、お代わりいる?」

「ああ、貰う」

 ポットを持って神下が近づいてきて、不意に耳元で可憐な声を響かせる。



「次も負けないから――」


 ドキっとした。



 なに勝手に勝ち誇ってんだよ。別に勝負なんかしてねぇよ。

 やっぱ子供っぽいな、こいつ。

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