第24話:結婚披露宴
「タリム王国国王、ルーカス陛下御入場。
フロリダ大公国女大公、エルサ陛下御入場。
タリム王国王子、フロリダ大公国公子、ジリオン殿下御入場」
司会の男の言葉で私達は檀上を進みます。
今日の主役ですから、皆が拍手で迎えてくれます。
要注意のヘリーズ王国の全権大使も、今は笑顔を浮かべています。
これからの厳しい交渉を乗り越えるのに、少しでもいい印象を与えたいと思っているのでしょうが、それは無理というものですよ。
ルーカスの家臣団は、鎧袖一触でヘリーズ王国軍を粉砕しました。
練度の実戦経験も段違いなので、全く戦いにもならなかったそうです。
いえ、そもそもルーカス軍が来たという噂だけで、ヘリーズ王国軍の兵士が逃亡してしまい、戦う前から敗走が始まっていたそうです。
そのままに追撃に追撃を重ね、ヘリーズ王国領の半分を占領し、今も王都を包囲しているのですから、完全勝利と言っていいですね。
ルーカスは占領地の併合を宣言して、更に建国も宣言しました。
異を唱える国は全くなく、ウィリアム殿下とルシア殿下も建国を承認し、改めて同盟締結を約束したのですが、そこで新たに話し合われたのが、フロリダ公爵家を独立させて、フロリダ大公国とする事でした。
最初は両殿下も参陣した貴族達も難色を示していたのですが、この戦いで手柄を立てた貴族達の褒美を、分家させた子弟にタリム王国内で与える事で話がつきました。
両殿下も、貴族達への褒美には頭を悩ませていたのです。
最初の契約で、与えるべき領地は潰した王太子派貴族の領地とする事になっていましたが、それでは国内に王家と同等の領地を持つ貴族ができてしまうのです。
それでは何時分離独立の内戦が始まるか分かりませんし、それを好機と隣国が侵略戦争を仕掛けてくるのは目に見えています。
まあ、なによりも問題だったのは、今はまだヘリーズ王国を粉砕しただけで、王太子とその一派が無傷で残っている事です。
ここでルーカス軍と決裂してしまったら、確実に王太子軍に勝てるとは言いきれないどころか、ルーカス軍に見捨てられた、もしくは王太子軍と話がついたルーカス軍に背後を襲われると考え、士気の落ちた貴族軍まで離反してしまいます。
こういう強かな交渉は、家臣達がやってくれたそうです。
まあ、最後に主力軍のいない領地を狙ってきた、タリム辺境伯領と領地を接するドレイク王国軍五万を、たった千騎の騎士と一万の騎乗兵で粉砕したルーカスは、大陸に冠絶する勇名を勝ち取りました。
「うっば、あああああ」
ジリオンが無邪気に笑っています。
ルーカスの名声がこの子の負担にならなければいいのですが。
自称身体の弱い聖女の妹に、婚約者の王太子を奪われ、辺境に追放されてしまいました。 克全 @dokatu
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