第23話:血生臭い団欒

 色々とありましたが、ルーカスの騎士団が出陣しました。

 名目上の総大将はウィリアム殿下とルシア殿下ですが、実質は違います。

 両殿下にはそれぞれルーカスの騎士団長が副将としてついています。

 本当の指揮官は彼らなのです。

 もう一人の騎士団長は、ルーカスの実父、フォード伯爵ゼフォーラ卿と一緒にいて、何かあった場合はフォード伯爵の名で全軍を指揮します。

 最悪の場合でも、指揮官継承が準備されています。


「胎教に悪いから、本当は言いたくないのだが、どうしても聞いておきたい事があるんだ、いいかな?」


 何時も私を気遣ってくれるルーカスが、いったい何事でしょうか?

 とても重大な事だと言うのは分かるのですが……


「はい、構いませんよ、いったい何事ですか?」


「あの三人に任せておけば、ニルス将軍が率いるヘリーズ王国軍なら、簡単に蹴散らしてくれるだろうが、問題はその後、王都を解放してからなんだよ。

 王太子のマルティンと取り巻きを殺すのはいいのだが、どれくらい残虐な処刑法を選ぶか、エルサが選んでもいいのだよ」


 なるほど、そういう事ですか、家族の事ですね。

 両親と妹のマリアに復讐する機会を与えてくれるという事ですね。

 私が望めば、八つ裂き刑でも皮剥ぎ刑でもやれるという事です。

 確かに、マルティンや家族には凄い恨みがあります。

 ですが、ルーカスの言う通り、とても胎教に悪いですね。

 過去にとらわれず、未来を見て生きることが大切だと思います。

 なんといって、今の私はルーカスの妻なのですから。


「いえ、私にはどうでもいい事です。

 王太子やフロリダ公爵家への処罰は、ウィリアム殿下とルシア殿下に、これからの国に役立つ方法を選んでもらってください」


 私は言葉に出してみて、改めてそれでいいと思いました。


「分かったよ、こんな胎教に悪い話はこれまでだ、これからは将来の話をしよう。

 ウィリアム殿とルシア殿と話し合った時に、フロリダ公爵家の処分はマリアとアルバロとダニエラに止めて、フロリダ公爵家自体は処分しないで、エルサの台所領にすることになっていただろ。

 それが、私が出陣を拒否した事で、さらに譲歩してきたんだよ。

 元々のフロリダ公爵領に加えて、王太子直轄領を、不当な婚約破棄の賠償として割譲するといってきたよ」


 両殿下もよほど追い詰められたのでしょうね、思い切った割譲案です。 

 でも、それではウィグル王家の直轄領がかなり減ってしまって、王家と貴族の戦力差がほとんどなくなってしまいます。

 それが原因で、新たな戦争が起きなければいいのですが……

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