第22話:献策
「恐れながら申し上げます、ルーカス様が城に残ってくださるのなら、今まで城を預かっていた武将は、自由に戦うことができます。
今までは家臣に手柄の機会を均等に与えるべく、ルーカス様と一緒に従軍する部隊と、城を守る部隊は交代しておりました。
今回はルーカス様が城を守ってくださるのですから、留守部隊の武将は自由に動くことができます。
その者に陣借りや傭兵を指揮させる事も可能でございます。
ルーカス様の代わりは不可能ですが、ヘリーズ王国軍を撃退するくらいは簡単でございます」
今献策してくれたのはディエゴという名の騎士団長だったはず。
ルーカスが当主を務めるタリム辺境伯家には四つの騎士団が存在します。
騎士団の定員は一〇〇〇騎ですから、とても強力な兵力です。
ですがこれは正規の騎士と騎士見習ともいえる従騎士だけの数です。
普通は、これに仕官を求める陣借りと言われる自由騎士や傭兵を加わります。
数の力で勝つのなら、その一〇倍の領民を徴兵する事も可能です。
「騎士団」
騎士団長:一名
騎士長 :一〇名
騎士 :一〇〇名
従騎士 :一〇〇〇名
徒士兵 :一〇〇〇〇名(籠城戦と強制徴募遠征の場合のみ)
それに、タリム辺境伯家は広大な未開地を開拓しています。
開拓民は、材木の切り出しや根株の引き抜き、大石の排除に牛馬の力を利用していますので、非常時には開拓民が騎乗兵となるのです。
従騎士ですらありませんが、馬に乗った戦士なので、徒士兵とは比較にならない戦闘力を有しているのです。
彼らを加えた領民が守備兵力となるので、家臣だけでも戦闘に参加できるのなら、遠征部隊に三〇〇〇騎が加わることができます。
「旦那様、彼らに手柄を立てる機会を与えてあげてはいかがですか?
旦那様と一個騎士団がいてくれれば、領地は安全ではありませんか?
それとも家臣達が信用できませんか?」
挑発するような言い方をして、ルーカスの決断を迫りました。
私がわざとこういう言い方をしているのは、ルーカスも家臣達も分かっています。
でも、ルーカスにも突っ張った意地があるかもしれませんので、意見を翻すためのきっかけを作ってあげようと思ったのです。
まあ、ルーカスほどの漢なら、家臣が素晴らしい献策をしたのに、自分の面目を優先して、却下するような事はないと思います。
「はっはっはっはっは、分かったよエルサ。
そんなに気を使ってくれなくても、大切な家臣の献策を無碍に退けはしないよ。
よく言ってくれた、ディエゴ。
その献策の褒美として、今回の出陣の総大将を命じる。
何時もの順番に従って、一個騎士団を残して出陣してくれ」
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