第5話:婚約破棄追放
「よくもそのような大嘘をつけましたね、辺境伯。
王太子殿下、このような不忠者は、不敬罪で追放刑にしてしまわれませ。
この不忠者と一緒に殿下を陥れようとしたエルサも、婚約を破棄して追放刑にしてしまえばいいのです」
今まで装っていた、身体が弱くて大人しいという仮面をかなぐり捨てて、妹のマリアが鬼のような形相で私とタリム辺境伯ルーカス卿を睨みつけます。
ですが、振り返って王太子に決断をうながす時には、か弱さと色気を醸し出して誑かすのですから、開いた口がふさがりません。
自分では上手くやっている心算なのでしょうが、その全てを国内外の王侯貴族にみられている事に、全く気が付かない愚か者です。
「うむ、その通りだ、私はここに王太子として宣言する。
タリム辺境伯ルーカスの爵位を不敬罪で剥奪して、国外追放とする。
フロリダ公爵家令嬢エルサとの婚約も不敬罪で解消して、国外追放にする。
近衛騎士、この者共を国境外に追放してこい!」
王太子は田舎芝居のような下手くそな見栄を切っていますが、会場中の国内外の王侯貴族から嘲笑われています。
そもそも貴族に対する処罰は、国王の権限でしかできません。
貴族院議会で様々な手続きを経て処罰を決定しても国王が拒否すれば終わりです。
王太子といえども貴族を処罰をする事などできません。
まあ、この憶病で愚かな王が追認すれば別ですが。
「それはとても結構な事ですな、殿下と国王陛下にその覚悟がおありなら、私は王都を去り辺境に向かいましょう。
ここにお集まりの国内外の王侯貴族の方々、これで私は主のない身となりました。
皆様方が私をどう評価してくださるか、辺境の地で楽しみにしております」
ルーカスが恐ろしい事を口にしました。
辺境に割拠するから、家臣に迎えたければ相応の爵位を寄こせと言っています。
ルーカスが実効支配している辺境は、どれほどの広さがあるかも分からないほど広大で、全て開発できれば独立した大国に匹敵すると噂されています。
しかもルーカスの武勇は、大陸一とも噂されているのです。
大国がルーカスを家臣に迎えられたら、大陸統一も夢ではないでしょう。
「エルサ嬢、同道してくださいますか?」
え、私を一緒に連れて行ってくれるのですか?!
そんな事をされると、期待してしまうではありませんか。
私は醜女ではありませんが、絶世の美女には程遠い、十人並の容姿です。
それでも女ですから、美丈夫の騎士や王子様に、心から愛され求婚される夢くらい見るのですよ!
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