第30話 (ジュディではなく)俺の配下
体躯二mを超す、筋骨隆々の、巨大なハンマーを担いだ大男だ。
どう見ても敵意に溢れているその男は、潰れた片目と残っている片目の両方をギロリと俺に向け、続けた。
「我はグラディアス様の下僕、”不死身”ガーライルだ」
グラディアスとは、親父のこと。
魔王城内では見たことがないから、冒険者とかだろうか。
「魔族にも冒険者っているんですね」
「なんでいないと思ったんだ?」
「魔人ってみんな魔法が使えるじゃないですか」
「それでも弱いやつもいるからな」
明らかに敵対的かつ強そうな男を前にしても、ジュディは変わらない。
俺も職業柄、強そうな奴には慣れている。
まあ人目もあるわけだし、いざとなったら最強の配下たちが助けてくれるだろう。
特に反応しない俺たちにしびれを切らした風に、ガーライルが再び話し始めた。
「グラディアス様は素晴らしい魔王であられた。それに対し、お前はなんだ!」
「俺も望んでこうなったわけじゃないんだが」
「くだらん言い逃れをするな! 我は貴様を魔王として認めん!」
「はぁ」
俺にそれを言われてもなぁ。
一人で盛り上がっているガーライルは、俺の話を聞いちゃいない。
「だから小僧! 俺と戦え! 俺が勝ったら貴様は魔王をやめろ!」
「じゃあ誰が魔王を?」
「ラファエル様にでも譲ってしまえ!」
ちなみに、俺が何らかの理由で死亡した場合、血族に代わるまでの代理を務めるのは四将軍筆頭のラファエルである。
もし血族がいなかった場合、そのままラファエルが魔王になる。
「ラファエルさんの養女にしてもらってもいいですか?」
「俺はまだ死にたくないからやめろ。で、ガーライル、俺が勝ったらどうするんだ?」
「ハッ、そんなことがあったとすれば我は貴様の配下になろう」
いらねぇ……と拒否しかけて、俺はふと思った。
魔王城にはジュディの配下に転身しそうなやつしかいないんだよな。
ここで一人くらい俺に忠実な配下をゲットしておくのもいいかもしれない。
負けたからと忠実になるのかは疑問だが、この男は愚直そうだから、負けたら従いそうである。
最悪約束を突っぱねれば追い出せばいいし。
「よし、受けて立ってやろう。今やるのか?」
「もちろんだ」
「ちょっと待てよ」
俺はそう断り、ジュディの周囲に結界を張り巡らせる。
まさかこんな野郎に相棒を殺されるわけにはいかない。
ジュディはおとなしく、結界の中に座った。
「何をしている?」
「いや――」
モンスターのはずの相棒、使い魔を戦闘前にわざわざ隔離するとは、キチガイの所業と見られてもおかしくない。
遠巻きに俺たち三人を囲む群衆からも、ポツポツと疑いの声が――
「おいおい、使い魔に戦わせないなんてどれだけ好きなんだ?」
「さすがロリコンだな」
上がっていなかった。
その話題がどれだけ好きなんだ?
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