第47話 新魔王城の新メンバー 2
しかし、魔力反応の持ち主は、動物型ではなかった。
そもそも、モンスターですらなかった。
「獣人さんですか?」
「そうだろうな」
木の幹に、体を預けていたのは、猫の耳を生やした少女。
今にも死にそうな様子で、俺たちの存在に気づいているのかいないのか目を閉じているが、魔力反応があるのだから死んでるわけがない。
獣人といえば、魔界の民の一種族。
魔王として、助けないわけにはいかない。
「おい、大丈夫か?」
俺の呼びかけに、猫耳少女はわずかに目を開けた。
「……誰にゃ?」
弱々しい声だったが、サンドラ姉さんの囁きに慣れた耳には、十分に聞き取れる。
「俺は魔王だ。怪我はないようだが、具合が悪いのか?」
「…………お腹が空いたにゃ」
「栄養失調か?」
「そうでしょうね」
栄養失調か……。
食事を与えればいいのか?
俺は、昼飯用の、元は(旧)魔王城の倉庫にあった保存食を差し出してみる。
「食えるか?」
猫耳少女が僅かに口を開いたので、保存食を一口大に分けようとして
「私がやりますよ。彼女もそのほうが安心でしょう」
横からジュディに奪われた。
まあ、同性の、年齢が(たぶん)近いほうがいいだろうと、それはジュディに任せる。
代わりに俺が取り出したのは、コップ。
「
水で満たして、猫耳少女の様子を窺う。
「どうでもいいですが、あなたの魔法名の名付け方本当に適当ですね」
「ネーミングセンスのない自覚はあるからな」
「よく考えたらあなた、センスと名のつくもの全滅ですね」
「自覚あるだけマシだろ」
昔の魔王には、自分のネーミングセンスのなさの自覚なしに、いろんな都市の名前を付けて回っていた魔人がいたようだ。
「どんな名前を付けたんですか?」
「グレートワンダースーパーシティってのが一番笑えたな」
「…………それ誰か止めてあげてくださいよ」
「ウチの街を馬鹿にするにゃ」
目を瞑って保存食を咀嚼していた猫耳少女が、いきなりカッと目を開いた。
そういえば、あの街は大森林の近くだった気がする。
「喋れるようになったなら事情を教えてくれんか?」
「その前にその水をちょうだいにゃ」
グビグビと水を飲み干す猫耳少女。
さっきまではあれほど死にそうだったのに、獣人の回復力とは素晴らしいな。
「ウチはデリア。グレートワンダースーパーシティ居住の冒険者にゃ」
「それ自分で言ってて恥ずかしくならないのか?」
「うるさいにゃ。話聞かないにゃ?」
「聞く聞く」
「なら黙ってるにゃ。ウチはデリア。グレートワンダースーパーシティ居住にゃ」
「そっからやり直すのかよ!」
どれだけそのセンス皆無の都市名が好きなんだ。
「黙ってるがいいにゃ。ウチはデリア。グレートワンダースーパーシティ居住にゃ」
何度でもそこからやり直すつもりらしい。
話が進まないので、俺はさすがにツッコミを抑える。
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