第32話 いよいよ絶望的な俺の評判 1
着替えをしに行くというジュディの背を見送って数十分。
三階なので、それなりに魔人が通る。
好奇心または不審が含まれた視線を通りすがる魔人たちから次々浴びせられた俺が、自分の部屋に一度戻ろうかと考え始めた頃。
ジュディがようやく戻ってきた。
さっきジュディのメイクアップをしたのと同じ衣装部に行ったから、それなりに可愛くなっているのだろう。
そう思いながら彼女の服を見た俺は、首を傾げた。
「なんだ? その服」
衣服の知識がほぼゼロの俺には説明しがたいが、着ているのは一枚の布だけ、腰の周りを太い帯が囲っている。
ジュディは自慢げにくるりと一周した。
「浴衣です」
「ユカタ?」
「異世界では、これが祭の定番なんです。特注で用意してもらいました。この期間で作っちゃうなんて、衣装部の皆さんは本当にすごいですね。トップがダメでも組織というものは上手く回るみたいです」
「うるせえよ」
なぜどんな台詞でも俺への罵倒を必ず挟んでくるんだ。
「お祭デートで着飾ってこない男子は貶していいんですよ?」
「デートだったの?」
「はい、今日はエスコートよろしくお願いします」
腕に抱きついてきたジュディの満面の笑みを見て、俺は悟った。
こいつ、俺がロリコンだという噂を徹底的に浸透させるつもりだ。
まさか自分の身を犠牲にしてまで、俺の評判を貶めようとするとは。
怒りを通り越してもはや感嘆である。
「で、感想はないんですか?」
「胸の小さいほうがあってそうだな」
「服のセンスがないわりに、そういうところだけめちゃくちゃ鋭いですね。こちらも怒りを通り越してもはや感嘆ですよ」
どうやら感想は正しかったらしい。
そんな服を着てくるとは、少しは小さいことを気にしているのか?
「これから大きくなるからいいんですよ! 背も胸も」
ちょっとむくれた風のジュディ。
あまり機嫌を悪くさせすぎると何をされるかわからない、少し機嫌をとっておこう。
「可愛いと思うぞ、よく似合ってる」
「……心読めるの忘れてないですか? しかも棒読み。だからモテないんですよ」
褒めているのにひどい言われよう。
「まあ、気持ち――すらもないんですが、言葉だけは受け取っておきましょう」
なんかあんま機嫌が良くなった感じがしないし、もうひと押ししておくか?
魔王秘伝の技――もので釣る。
「何でも買ってやるぞ」
「わあ、嬉しいです。じゃあ魔王城買ってください」
「売ってない!」
俺の失言に目敏いな。
「失言なんだから”耳”敏いじゃないですか?」
「心を読んでる分は目敏いじゃないか?」
「おお。意外と的確な返しでした」
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