第24話 代替わり祭 1
結局部屋を奪われた俺は、いつも通りの、最上階の一つ下の階の部屋に住むことになった。
あれから数日、魔王になっても何も生活は変わらないままだ。
引っ越しの手間がなくなったし、それ自体は別にいいのだが、また彼女にやり込められたのが頭にくる。
なぜ彼女はああも口やら何やらが達者なのだろうか。
どうやら、あの性格は異世界の人間だから、などというわけではなく、彼女個人の特徴であるらしいしな。
あんな性格ばかりの人間だったら、その世界は崩壊間違いなしだろう。
どうにか彼女をやり込められる方法がないものか。
まあそれは、今考えることじゃない。
実は今日、魔王の代替わりを祝うイベントが行われるのだ。
魔王になって初めて、公的に魔界の民たちの前に姿を現す機会である。
ただ、緊張はしない。
俺に対する魔界の民の評価がすでに底値を打っていることを知っているからだ。
これ以上評判が落ちようがないのだから、たとえ失敗しようとも問題はない。
そうは言っても、恥ずかしいのであんまり酷い失敗はしたくないが。
祭は朝早くからあり、魔王の演説は最初の方に行われるので、俺も早起きしなければいけなかった。
「朝九時のどこが早いんですか?」
若いのに早起きなジュディに、俺は眠い目をこすりながら反論する。
「日が上っているうちは早朝だろ」
「真昼になってやっと起きるってことですか? 働きもしないのによくそんな眠れますね」
もはやお馴染みとなった――なりたくなかったが――辛辣な言葉を受けつつ、俺は魔王城三階のバルコニーに向かう。
もはやバルコニーとは呼べないほど広いそこの裏には、魔王城会議の出席メンバーのほとんどが集まっていた。
「魔王様、王冠は?」
「ジュディに奪われた」
「なら問題ないですね」
問題ないの?
ラファエルに唖然とさせられるのもこれで何度目か。
というかジュディに唖然としたい。
信頼度合いがハイエスト山ばりに高くて驚きである。
「そのハイエスト山ってなんですか?」
「世界で一番高い山だ」
「まんまですね……」
「誰がつけたのか知らんがな」
この世界の地名はそういうのが多い。
「人はどれくらい集まってるんだ?」
唯一暇そうなミシェルを捕まえて聞く。
数が一定の基準より多いと、俺の才能乏しい魔力感知では数え切れないのだ。
声からもある程度は多いことが分かるが……
「そこの広場だろ? ざっと十万人くらいかな」
「多すぎるだろ!?」
魔王城の、塀を越えて外に面したバルコニー、その前にある広場は、魔都にある中では一番広いが――ということはたぶん国中で一番広いのだが――十万も入る広場があるはずがない。
せいぜい一万人も集まればぎゅうぎゅうだろう。
「いやいや、魔人は魔法を使えるんだぜ?」
たしかに、魔法を使えばやりようはあるか。
宙に浮いたりしているのだろうか。
けどそれじゃ十倍にはならないんじゃ――
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