第50話 新魔王城の新メンバー 5

「会話が多い章でしたね」

「章?」

「あなたの地の文がもはや消滅しそうということです。さらにわかりやすく言えば、あなたの存在感がもっと小さくなるということです。これ以上小さくなったら消えて無くなりそうですね」

「俺はなんでここまで貶されているんだ?」


 今回は本当に何もやってないよな?

 

「ところでデリアさん、成せばなる、成さねばならぬ何事も、成さぬは人の成さぬなりけりって言ってもらっていいですか?」

「にゃせばにゃる、にゃさねばにゃらぬにゃにごとも、にゃさぬは人のにゃさぬにゃりけり」

「萌えませんか?」

「ぐっ」


 ちょっとだけぐっと来たことは認めざるをえない。

 そんな俺を、ジュディが冷たい目で見ていた。

 自分で言わせたくせに。


「明日一度元祖魔王城に帰りません?」

「なんで?」

「燃えるゴミの日ですから」


 俺を萌えるゴミだと言いたいのか。

 上手い下手以前に、否定できないのが悲しい。


「さあ、デリアさん、次に案内してくださいよ」

「わかったにゃ」


 もう期待はしてなかった。

 しかしデリアの頭の悪さは、俺たちの予想を遥かに凌駕してきた。


「これってもしかして……」

「ドラゴンにゃ」


 ドラゴンの巣を見下ろしながら、少女二人が言葉を交わす。

 俺は呆れて言葉も出ない。

 

「ドラゴンって、洞窟に住んでるんじゃないんですか?」

「気になるのそこなの!?」


 やっぱりジュディの価値観はどこかおかしい。

 なぜ世界最凶のモンスターたるドラゴンを見てまっさきに気にするのがそこなんだ。


「言葉出せてるじゃないですか」

「呆れすぎて一周回ってな」

「ウチらの情報網をにゃめるにゃにゃ」

「ちょっと会話の流れを読んでほしいのと、それじゃもはや何を言ってるか絶望的にわからん」

「耳まで悪くちゃ救いようがにゃいにゃ」

「俺貶されてばっかだな!?」


 どう考えてもデリアが悪いというのに。


「って、そんなことはマジでどうでもいいんだよ! それより何を考えてお前は俺たちをここに案内したんだ!?」

 

 そもそもドラゴンの巣の場所なんて普通の魔人は知らないんだが、伝統を重んじる獣人は森の中に住んでいると聞く。

 デリアは街住まいのようだが、同じ種族なら知っていてもおかしくない。


「ドラゴンのどこに文句があるにゃ? 肉は最高級だにゃ」

「そういうことじゃなくてだな」

「あれ、もしかして倒す自信がないにゃ? 魔王にゃのに?」

「煽り性能は低いのに、その語尾のせいでやたらと腹立つな!?」

「そのための語尾にゃ。嘘にゃ」

「どっちだよ!?」

「ほら、あなた達二人が話し始めると、何も進みませんから」

「「お前に言われたくない(にゃ)!」」

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