第51話 新魔王城の新メンバー 6

「で、ワイバーンですら、食うのに時間がかかるから諦めたのに、その何十倍もあるドラゴンのところに連れてきてお前はどうしたいんだ?」

「…………さあ、次に行くにゃ!」

「あなたと誤魔化し方が一緒ですね」

「ここまで知能指数低いやつと一緒にせんでくれ」


 こんな鳥頭はしていない。



 ようやくデリアはまともな狩り場に俺たちを導き、俺とデリアが数日分の肉を狩ったあと。


「じゃあウチは帰るにゃ。グレート、グレート? ……ウチの街に!」

「誇りとか言っときながら覚えてないのかよ!?」


 想像を絶するアホさだな。

 鳥頭とか言ったら鳥に失礼なレベルだ。


「帰っちゃだめですよ。あなたはスライム料理を作ってくれるんでしょう?」


 口を尖らせたジュディに見つめられ、去りかけていたデリアの背中が硬直した。

 もしかして散々俺たちを連れ回したのも、忘れさせるため?

 いや、それはないな。

 デリアのアホさは本物だろう。

 それでも、身の危険を察知するのは生物ことごとくに備わる本能で、スライム料理の件は覚えていたらしい。


 俺も面倒なので追う気はなく、さっさと逃げてしまえばいいものを、デリアは冷や汗を垂らしながら戻ってきた。

 

「そ、そうにゃったにゃ。うっかり忘にぇてにゃにゃ」


 酔っぱらいのごとくろれつが回っていない。

 スライム料理というのは、そんなに不味いものなのだろうか。

 少し興味が出てきた俺も、ジュディの援護をする。


「じゃあ本家魔王城までは転移で帰るか。ちゃんと陣を用意してきたから、人間の領地に飛んだりはしないぞ」

「幼女が降ってきそうで怖いですね」

「俺が気を利かせるのがそこまで珍しいか……?」


 首を傾げつつも、魔法陣を描いて、二人が陣内にいることを確認してから呪文を唱える。

 さすがにあそこまで念を入れれば失敗することはなく、転移したのはきちんと城内だった。

 

「ところでここどこですか?」

「さあ?」


 俺に聞かれても。

 地図とか読めない系の魔人だからな。


「誇らしげに言わないでくださいよ……」

「お前こそその超能力でなんとかならんのか? 俺がここに来るまでの記憶を読んで」

「わかりました、こっちです」

「ノータイムだな!?」


 魔法より時間ロスが少なかった。

 心を読める対象が俺だけ、ということを除けば万能の能力である。


「本来魔王の能力読めればそれで十分なはずなんですけど。ところでデリアさんどうしました?」


 黙って呆然と周囲を見回していたデリアは、目を見開いて言った。


「本当に魔王だったにゃ!?」

 そこか。

 

 デリアは放っておいて、ジュディから遅れないように急ぐ。

 遅れたらたぶん丸一日くらいさまよう羽目になる。

 それほど本家魔王城はデカい。

 というかジュディがデカくした。

 自分が小さいからデカいことに憧れでもあるのだろうか。


「小さいのはあなたの器ですよね」

「聞いてたのか」

 距離が離れたから油断していた。

 

 おっと、今ようやく気づいたが、数ヶ月前につけたジュディの生命反応がまだ生きてたな。

 あのナンパ騒動の際につけたやつである。

 今まで気づかなかった自分に愕然だが、どうせならこのままつけておこう。


「ストーカーじゃないですか」

「お前をストーカーしても嬉しくないよな」

「こんな美少女を捕まえておいて失礼ですね」

「せめて少女なのか幼女なのかくらい統一しとけよ……」

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魔王になって使い魔を召喚したら、人間の少女が出てきて逆に下僕にされそうなんだが あいうら獏人 @nanashitk

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